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【年金制度改革法成立】②年金支給開始年齢の引上げについて

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こんにちは。

前回は、年金制度改革法が成立したことを受けて、今後の制度改革の方向性として、昨年の年金に関する財政検証「オプション試算」を参照しながら、①厚生年金の適用のさらなる拡大、②国民年金の65歳までの加入期間の延長、③厚生年金の75歳までの加入期間の延長の3つのテーマを中心として検討されていくのではないかということをお伝えしました。

今回は、(a)昨年8月の財政検証「オプション試算」にも含まれず、 (b)12月の「社会保障審議会年金部会における議論の整理」にも、さらには(c)同じ12月の全世代型社会保障検討会議「中間報告」にも触れられていない、いわば「隠れたテーマ」でありながら、今後、もし、これが政府から提案されたとしたら、国民的論議を巻き起こすと思われる「老齢年金支給開始年齢の引上げ」について、いまの状況を確認しておきたいと思います。

 

1.老齢年金支給開始年齢の引上げ

これは、現行、65歳になっている老齢年金の支給開始年齢を、例えば67歳とか、68歳とか、あるいは70歳とかに引き上げるというものです。

今回の改正論議では、関連する上記の(a)(b)(c)のペーパーに記載がないように、直接的なテーマとはならず、「受給開始時期の選択肢の拡大」という比較的穏やかな改正で落ち着きました。

※「支給」開始年齢と「受給」開始年齢について:国は、制度としての65歳という年金の「支給開始年齢」と分けて、国民が繰上げ、繰下げによって選択できる年金の受給を始める年齢を「受給開始年齢」又は「受給開始時期」「受給開始可能期間」と呼んでいるようです。

 

昨年の骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2019)には、第2章の「全世代型社会保障への改革 ① 70歳までの就業機会確保」の項に、

70歳までの就業機会の確保に伴い、現在65歳からとなっている年金支給開始年齢の引上げは行わない。

と明記されています。

この文章の前半と後半のつながり具合がわかりにくいですが、社会保障審議会年金部会の議事録(後述)などから判断しますと、「70歳までの就業機会の確保」の措置(※)をするからと言って、それを理由にして「年金支給開始年齢の引上げ」をすることはない、ということのようです。
※今国会で、65-70歳の高年齢者の就業確保措置を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正が成立しました(2021年4月施行)。

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2.政府内での論議について

(1) 社会保障審議会年金部会

2018年11月1日開催の第6回部会で、年金支給開始年齢に関してストレートな論議がなされているようですから、それを議事録から見てみます。

A委員

これからの政策の基本は、定年の廃止であり、支給開始年齢は例えば70歳ぐらいにすることが、誰が考えても自然です。

B委員

支給開始年齢の引き上げをはなから議論の俎上から除外してしまうのではなくて、せっかく財政検証の時期でもありますので、将来的なこともありますので、支給開始年齢の引き上げというものも、議論しておく必要があるのではないか。

 

これに対し、厚労省側数理課長が

支給開始年齢の引上げ財政効果があるかどうかということにつきましては、まず、平成16年改正前の時代か後の時代かということで大きく違うということになります。(中略)平成16年改正後につきましては、保険料を固定してマクロ経済スライドによる給付水準調整を行い、65歳を支給開始年齢とし、受給開始時期を自分で選択できる仕組みになっておりますので、その上においては財政中立であると考えております。

と説明。次いで年金課長が

年金財政の観点からは、(中略)政府としてはそういう観点から支給開始年齢の引き上げは考えていないということを、総理以下、繰り返し外に向かってお話し申し上げております。

と答えています。

 

このことから、厚労省としては、支給開始年齢の引上げは考えていないというのが、現在の公式の見解のようです。(ただし、「年金財政の観点からは」という限定付きであるところが気になりますが…。)

(2) 財政制度等審議会

財務相の諮問機関である財政制度等審議会における社会保障制度改革については、日経新聞(2019年4月23日)👇を見ますと、2018年の改革案にあった支給開始年齢の68歳引き上げが、2019年度では消えているということです。

www.nikkei.com

 

政府としては、当面、年金の支給開始年齢の引上げではなく、受給開始時期の選択肢の拡大を政策として統一したものと思われます。

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3.(参考)諸外国の老齢年金の受給開始年齢

日本年金機構のホームページの「主要各国の年金制度の概要」(更新日:2020年3月25日)から、老齢年金の受給開始年齢が66歳以上になっている国を見てみます。

  • ドイツ…67歳に向けて段階的に移行中(2029年完了)
  • アメリカ…67歳に向けて段階的に移行中(2027年完了)
  • オーストラリア…67歳に向けて段階的に移行中(2023年完了)
  • オランダ…67歳に向けて段階的に移行中(2023年完了)
  • スペイン…67歳に向けて段階的に移行中(2027年完了)
  • アイルランド…2021年までに67歳に、2028年までに68歳に引き上げ

これを見ますと、今後、わが国においても67歳程度までの支給開始年齢引き上げの論議が出てきてもおかしくない印象を受けます。

4.結論

以上、老齢年金の支給開始年齢引上げについては、現在は政府の政策プログラムには入っていないようです。

しかし、今後の状況によっては、論議の中に入ってくる可能性は十分あると思います。

その際は、単純に年金財政の観点からの引上げ論議ではなく、定年制を含む高齢者の就労状況等のより広い観点から論議されることになるものと思われます。

今回は、老齢年金の支給開始年齢の引上げをめぐる現状についてお伝えしました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

 (2020.06.13)

 

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