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【公務員の定年延長】現在の再任用制度の利用状況はどうなっているか?

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こんにちは。

前回は、今秋の臨時国会で成立見込みの公務員の定年延長について、それは必要ないのではないかという愚見を述べさせていただきました。

今回は、今後の定年延長を考えるにあって、現在の再任用制度*1の利用状況について、確認しておきたいと思います。

 1.国家公務員の再任用の状況

人事院月報2019年11月号に掲載された給与局生涯設計課の「国家公務員の再任用の現状と課題」によって、最近の状況を見てみます。

 (1) 最近の再任用の推移

上記資料の表1を見ますと、最近の国家公務員の新規再任用の状況は下表のようになっています。 

前年度定年退職者の新規再任用状況       (単位:人)
  平成27年 平成28年 平成29年度 平成30年度 令和元年度
前年度定年退職者(A) 4,048 4,361 4,637 4,400 4,867
新規再任用職員数(B) 2,187 2,625 2,974 2,940 3,196
割合(B/A) 54.0% 60.2% 64.1% 66.8% 65.7%
「国家公務員の再任用の現状と課題」の「表1 前年度定年退職者(特例定年退職を含む。)の新規再任用の希望状況等 【給与法適用職員】」から作表。

定年退職者の3人に2人が再任用を選択しているようです。

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(2) 短時間勤務が多い

 同じ資料の表5「公務(行政職俸給表(一))と民間(事務・技術関係職種)の勤務形態の比較」を見ますと、国家公務員の再任用では、新規68.7%、再任用職員全体では81.9%短時間勤務になっていて、フルタイムは少数派です。

短時間勤務とは、週4日の31時間(始業:午前8時30分、終業:17時15分、休憩時間:12時~13時)などの勤務体制になります。

民間企業の場合は、反対に92.8%フルタイムになっています。

(3) ポスト(職務の級)

再任用の場合は、現役の職務の級より下位の職務に従事することが多くなります。

同資料によりますと、主任級、係長級での再任用が70.3%と多数を占めています。

また、退職時より1級下位での任用が18.0%2級下位43.6%3級下位29.2%となっています。

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(4)国家公務員の定年延長の必要性(再考)

前回にもお示ししましたが、2018年10月の人事院の「定年を段階的に65歳まで引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出の骨子」をみますと、現在の再任用制度においては、短時間勤務の割合が高いこと、主任級、係長級としての再任用が多数を占めていることで、「職員の能力及び経験を十分にいかしきれず、公務能率の低下が懸念」される、「職員の能力と経験を本格的に活用することが不可欠」として、定年延長の必要性を述べていますが、果たしてそうでしょうか。

短時間勤務、下位ポストでの任用の問題は、いきなり定年延長ではなく、まず再任用制度の改善等を検討すべきだと思います。

 

それに、60歳到達時点で普通退職しての、現行と同じ短時間勤務の再任用制度を、定年延長と併存させることとも矛盾しているようにも思われます。

 

上記の「骨子」にも、「職員側も、無年金期間が拡大する中、生活への不安が高まるおそれ」とありますように、人事院の言う定年延長の必要性(短時間勤務、下位ポスト)は後付けの理屈であって、国家公務員側の収入確保が本音の理由と言わざるを得ません。

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 (5) 再任用制度は、国民のための「質の高いサービス」に役立っているか?

 定年延長になれば、職場には、次のような職員が混在します。

  1. 60歳以下の通常の職員
  2. 60歳超の延長された定年前の役職定年した職員
  3. 60歳で普通退職した短時間勤務の再任用職員
  4. 延長された定年後の再任用職員(定年年齢が65歳になるまでの経過措置期間中)

このような複雑な職員体制をうまく機能させることができるのか? 

まずは、今の再任用職員は有効に活用されているのか、各組織、職場での検証が必要だと考えます。

定年延長によって職場の風通しが良くなればいいのですが、高齢職員が滞留することで、空気が澱むようなことになってはいけません。

 

職場の活性化、ひいては国民に対して質の高い行政サービスを提供できるのか、という観点で再検討してもらいたいと思います。

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(6) セカンドライフの選択が遅くなってしまう!

高齢公務員にとって、収入確保という抜き差しならない課題はありますが、それも現役のときの組織や職場での定年延長、再任用でなければならない理由はありません。

 

60歳の定年で、いちど、これからのセカンドライフの過ごし方について考えてみるという機会になっていたのが、定年延長で、その機会がズルズル先送りになってしまうことが懸念されます。

 

本当は、40歳、50歳、あるいはもっと早くから、チャンスが来た時にチャレンジできるように、自分を高め、準備しておくことが理想でしょうが、私を含め、そんなことはできない場合も、定年退職の時には多少なりとも考えるはずです。

 

2.地方公務員の再任用の状況

 国家公務員の定年延長に倣って、地方公務員も同じ内容での定年延長が実施されると思います。

参考までに、地方公務員の再任用の状況についても確認しておきます。

 

総務省の資料「平成30年度 地方公務員の退職状況等調査」を見ますと、下表のようになっています。

定年退職者の再就職状況(平成29年度離職者)          
  定年退職者 うち再就職者合計 割合  
うち当該団体に再就職した者  
うち再任用   うち臨時・非常勤等  
  割合 割合 割合
(a) (b) (b)/(a) ⒞/(a) (d) (d)/(a) (e) (e)/(a)
都道府県 37,331 25,781 69.1% 19,520 52.3% 15,878 42.5% 3,642 9.8%
政令指定都市 8,749 6,523 74.6% 5,643 64.5% 4,733 54.1% 910 10.4%
市・特別区 17,422 12,694 72.9% 11,326 65.0% 10,222 58.7% 1,104 6.3%
町村 3,277 2,069 63.1% 1,780 54.3% 1,433 43.7% 347 10.6%
一部事務組合 1,763 1,124 63.8% 858 48.7% 696 39.5% 162 9.2%
合計 68,542 48,191 70.3% 39,127 57.1% 32,962 48.1% 6,165 9.0%
総務省「平成30年度 地方公務員の退職状況等調査」の表8「定年退職者の再就職状況(平成29年度離職者)」から作表。

 

 

大雑把に言えば、地方公務員の場合、定年退職者の7割が何らかのかたちで再就職し、6割が現役のときと同じ組織(役所等)にそのまま残り、5割再任用職員、1割臨時・非常勤職員となっています。

 

地方公務員の定年延長についても、国家公務員と同じような理由で、定年延長は「必要なし」、あるいは「時期尚早」と考えます。

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3.まずは再任用制度の検証が先では?

公務員の職員制度は、それが国民、市民への質の高い行政サービスにつながるのか、という観点から検討されなければなりません。

 

主に民間企業で、コロナ禍でのリモートワークの中で露呈してしまった「仕事をしない・仕事のできないオジサン問題」という難しい問題もあり、それは公務現場にも共通する事柄です。

 

再任用制度での課題を解決できないままの定年延長は、問題を先送りするとともに大きくして、解決をより困難にしないかと懸念します。

まずは、現行の再任用制度のなかで、高齢職員を活用できているのか、有効活用するために必要なサポートは何か、検証し検討することを優先すべきではないでしょうか。

 

今回は、前回に引き続き、公務員の定年延長について考えてみました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

(2020.08.22)

 

*1:公務員の場合は雇用契約によらない任用制度ですので、定年退職後の継続就労も、民間企業のように「再雇用」とは言わず、「再任用」と言います。