【定年制】定年制を定めている企業の割合、公務員の定年延長について
こんにちは。
前回、高年齢者雇用確保措置について、令和元年においては、3項目の措置のうち、ほとんどの企業が行ったのは「継続雇用制度の導入」(77.9%)であり、「定年の引上げ」を実施した企業の割合は19.4%、「定年制の廃止」にいたってはわずか2.7%に過ぎないということをお伝えしました。
今回は、そもそも「定年制」を採用している企業、「定年制」のない企業の割合はどうなっているのか、確認したいと思います。
定年制を定めている企業の割合
厚労省の平成29年就労条件総合調査によりますと、定年制を定めている企業の割合は95.5%、定年制を定めていない企業の割合は4.5%です。
企業規模別では次のようになっています。
労働者数 | 定年制を定めていない企業の割合(%) | 定年制を定めている企業の割合(%) |
1,000人以上 | 99.3 | 0.7 |
300~999人 | 99.7 | 0.3 |
100~299人 | 98.0 | 2.0 |
30~99人 | 94.2 | 5.8 |
定年制を定めている企業の割合を、5年前と比べると、次のようになります。
平成24年 (%) | 平成29年 (%) | |
合計 | 92.2 | 95.5 |
1,000人以上 | 99.3 | 99.3 |
300~999人 | 99.2 | 99.7 |
100~299人 | 97.6 | 98.0 |
30~99人 | 89.8 | 94.2 |
以上から、わが国では企業規模が大きいほど定年制を定めている企業が多く、また中小規模の企業では、新たに定年制を定める企業が多いことがわかります。
これは、労働者の確保において厳しい状況にある中小企業が、定年制を定めることで高年齢者の雇用確保を図ろうとしているのではないかと思います。
定年制を定めることで、退職金を含む雇用条件をより明確にすることが労働者を確保する有効な手段になっているのではないでしょうか。
定年年齢「65歳以上」の企業の割合
今度は、定年年齢を「65歳以上」としている企業の割合を、5年前と比較しながら見てみます。
平成24年 (%) | 平成29年 (%) | |
合計 | 14.5 | 17.8 |
1,000人以上 | 3.9 | 6.7 |
300~999人 | 4.9 | 9.4 |
100~299人 | 8.5 | 12.5 |
30~99人 | 17.6 | 20.5 |
定年年齢を「65歳以上」とする企業の割合は、全体で17.8%であり、5年前より3.3ポイント増えています。
企業規模が大きくなるほど「65歳以上」定年の企業の割合が低くなっています。
これは、雇用確保措置において、大企業ほど、定年年齢の引き上げよりも継続雇用制度を採用する企業が多いことを反映しています。
ただ、「65歳以上」定年を採用している企業の割合は、「300~999人」企業で5年前に比べて4.5ポイント増加し、「100~299人」企業でも4.0ポイント増加していて、定年年齢の引き上げの一定の「勢い」を見て取ることはできるように思います。
高年齢者雇用確保措置の義務化の効果であると思います。
※なお、「65歳以上」のうち「66歳以上」の割合はまだわずかで、ほとんどは「65歳」です(平成29年において、定年年齢を「66歳以上」とする企業の割合:1,000人以上 0%、300~999人 0.2%、100~299人 0.7%、30~99人 1.7%)。
大企業ほど、定年年齢を引き上げたり、廃止したりする割合が低く、ほとんど継続雇用制度を採用しているわけですが、これら大企業含め、民間企業全般に定年年齢の引き上げ等を促すためには、公務員における定年制度の動向がカギになるものと思われます。
公務員の定年延長
安倍内閣は、今国会に、定年年齢の段階的引き上げを柱とする国家公務員法の一部改正法案を提出しています。(追記:国家公務員法の一部改正法案は、成立せず、廃案となりました。今秋の臨時国会に再提出される見込みです。)
労働力人口が減少しているなかで、高年齢者の雇用を促進することが狙いです。
担当大臣は、記者会見で「国家公務員から率先垂範し、民間企業のロールモデルとして役割を果たしたい」と述べたと報じられています(2020年3月14日付日経新聞)。
法案の主な内容は、以下の通りです。
① 定年の段階的引き上げ
現行 | 令和4年度~ 5年度 | 令和6年度~ 7年度 | 令和8年度~ 9年度 | 令和10年度~ 11年度 | 令和12年度~ 【完成形】 | |
定年 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 | 65歳 |
令和4年度から、2年間で1歳ずつ引き上げられていって、令和12年(2030年)4月から65歳になります。
現行の60歳定年退職者の再任用制度は廃止されますが、定年の段階的引き上げ期間中は、新たな定年から65歳までの間の経過措置として、現行と同様の再任用制度が残ります。
② 役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入
60歳で管理監督職を外れることになります。
③ 60歳に達した職員の給与
それまでの給与の7割になります。
④ 60歳以後定年前に退職した者の退職手当、定年前再任用短時間勤務制の導入
当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当は算定されます。
また、本人の希望により、65歳まで短時間勤務の職に採用することができます。
この法案と同時に、地方公務員法の一部改正についても提出されていますので、地方公務員についても、令和4年度から段階的に定年年齢の引き上げが実施されることになります。
現在、公務員は、満60歳の年度末で、原則として、①定年退職するか、②再任用職員として残るかのいずれかを選択することになっています。
令和2年度末からは、満60歳の年度末で、①役職定年した通常職員として継続勤務する、②普通退職するものの、短時間勤務の再任用職員として継続勤務する、③普通退職する、以上3つのいずれかを選択することになります。
なお、上記の②③の、60歳に達した日以後に、定年前の退職を選択した場合の退職金は、当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に算定することになっています。
また、経過措置中の延長された定年から65歳までの間は、再任用職員として勤務することを選択できます。
(ここの部分、修正しました。2020.08.04)
また、新たに導入される役職定年制度は、すでに民間企業では広く採用されていますが、公務員においても導入されることにより職員の就労意欲にも大きな影響があるものと思われます。
令和4年度から10年間は、通常の正規職員、役職を外れた定年延長職員、再任用職員が混在することになり、様々な人事上の軋轢が生じることも想定されるます。
10年間かけての65歳定年制というのは、スピードが少し遅いような気もしますが、この公務員の定年制度の改革は、民間企業でも65歳以上定年の割合が大きくなって、社会全体で高年齢者の雇用を促進することが目的ですから、現在17.8%にとどまっている65歳以上定年の企業の割合がどこまで高くなるかが問われるところです。
今回は、定年制を定めている企業の状況、及び公務員の定年延長についてお伝えしました。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.04.17)(2020.08.04 一部修正)