【高齢者の働き方】雇用確保措置と就業確保措置について
とりあえずは、再雇用
こんにちは。
前回は、楠木新さんの著書「定年準備」(中公新書)をご紹介しながら、現役の早い時期から定年後のことを考えることが大切ではないかということについてお伝えしました。
現在、企業等には65歳までの高年齢者雇用確保措置が義務付けられていますので、本人が希望すれば、原則として、65歳までは仕事を続けることができます。
会社人間であった人も、60歳で定年退職した場合、ひとまず5年間は、会社から放り出されて立ち往生することなく過ごすことができます。
現役のときには、定年後のことについて考えていなかったボンヤリものの私も、定年後、大勢に従って、1年更新、5年間期限の継続雇用制度を選択しました。
しかし、再雇用での仕事もハッピーというわけではなく、3年限りで辞めてしまいました。
(ブログ【定年の選択】「再雇用もストレスフルで、楽なものじゃない!」参照👇)
現在の高年齢者雇用確保措置の状況
令和元年11月に厚労省が発表しました、令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果によりますと、雇用確保措置の実施率はほぼ100%です。
でも、3項目の措置の内訳を見ますと、「定年制の廃止」をした企業の割合は2.7%(前年より0.1ポイ ント増加)、「定年の引上げ」が19.4%(同1.3ポ イント増加)、「継続雇用制度の導入」が77.9%(同1.4ポイント減少)となっています。
定年制度の廃止、引上げが増加しつつあるとはいえ、まだ企業の8割近くが継続雇用制度を採用(労働者数301人以上の大企業では88.4%)しています。
定年を65歳とする企業の割合は、全体で17.2%(昨年より1.1ポイント増加)となっていますが、大企業では10.6%(同1.2ポイント増加)にとどまっています。
定年制を廃止した企業の割合も、大企業ではわずか0.5%(同、変動なし)でしかありません。
今後の高年齢者就業確保措置の状況
今国会に厚労省が提出した、企業等に65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置について努力義務とする法案(雇用保険法等の一部を改正する法律案)が成立しました。
(2020.08.07追記:就業確保措置については、高年齢者雇用安定法の改正事項になります。)
これは、現在の高年齢者雇用確保措置の3項目に、「労使で同意した上での雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度の導入のいずれか)」(厚労省の法案概要)が加わることになります。
この新たな高年齢者就業確保措置は、来年4月から施行されますが、努力義務であることと、追加された起業や社会貢献活動への支援措置(創業支援等措置)の具体的な内容がよくわからないことから、70歳までの雇用促進にどれほどの効果があるのか不明です。
この就業確保措置の実施状況を見て、努力義務はやがて法的義務になることでしょうが、わが国の経済状況からして、やや悠長なようにも思います。
わが国の企業は、圧倒的に中小企業が多い構成になっていることから、制度変更に対応できるだけの「体力」がない企業が多いということかもしれませんが、日本全体が「ゆでガエル」になっていないかどうか、少し不安ですね。
定年制は年齢差別?
65歳までの法的義務としての高年齢者雇用確保措置、70歳までの努力義務の就業確保措置というあいまいで中途半端なことを止めて、いっそのこと定年制そのものを廃止したらどうかと思ってしまいます。
高年齢者就業確保措置を含む法案の閣議決定を報じた、今年2月5日付日経新聞の記事によりますと、「企業が従業員の年齢を理由に一律に退職させる定年制は「年齢差別」として、英米では原則として禁じている。」ということです。
わが国では、英米とは異なり、ヨーロッパ各国と同様、年金の支給開始年齢との関係で定年制の延長が少しずつ実施されている状況であり、定年制の廃止については視野に入っていない感じです。
しかし、今後、高年齢者の雇用を促進する観点から、本人が希望する場合には、65歳になっても、70歳になっても働き続けることができるようにすることが重要だと思います。
新卒一括採用、年功賃金、終身雇用等の日本型雇用慣行も、徐々に変化しつつあるように見えます。
その変化は押しとどめることができないでしょうから、「定年制は年齢差別」という大義が、現実の制度の変更、つまりは定年制の廃止への道を開いていく可能性はあるかもしれません。
今回は、高齢者の働き方というテーマに関して、高年齢者雇用確保措置の現状、新しい高年齢者就業確保措置の内容についてお伝えしました。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.04.15)