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【公務員の定年延長】必要ないのではないか?

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こんにちは。

 1.国家公務員法等の一部改正法案

(1) 廃案、再提出

先の通常国会で、黒川東京高検検事長のマージャンとばくスキャンダルのとばっちりを受けて、公務員の定年延長を目指していた国家公務員法等の一部改正法案が廃案となりました。

 

政府は、批判の強かった検察官の勤務延長に関する特例規定を見直したうえで、秋の臨時国会に、再提出する予定のようです。

 

国家公務員の定年延長自体には、野党も賛成していますので、再提出法案は可決するものと思われます。

同じく、今国会で継続審議となった地方公務員法の改正案も、臨時国会で通るでしょうから、今秋には、公務員の定年延長は制度として実現する見込みです。

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国会では、公務員の定年延長自体はほとんど(まったく?)論議されることはありませんでしたが、廃案、継続審議になったことで、あらためてこのことについて考える時間ができたことはよかったと思います。

 

コロナ禍によって、民間中小事業所の倒産、非正規労働者を中心に解雇等が増加しているのに、公務員の定年延長をしていいのかという声が聞かれる中で、与野党とも既定路線のように、あまり議論されることなく、すんなり可決、成立してよいものかどうか、私は疑問に思います。

 

(2) 廃案になった国家公務員の定年延長のポイント
  1. 2022年度から2年ごとに1歳ずつ65歳まで引き上げ
  2. 60歳を超えた職員の給与水準は直前の7割に
  3. 60歳で役職から外す役職定年制を導入(一部例外あり)
  4. 60歳以後の定年前退職者の生活支援(短時間勤務再任用を存続、退職金は定年退職で算定)

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 2. 政府の言う「必要性」とは?

(1) 骨太の方針

 7月17日、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2020」、いわゆる骨太の方針閣議決定しました。

そのなかで、「2018 年の人事院の意見の申出も踏まえ、公務員の定年引上げに向けた取組を進める。」と記載されています。

 (2) 人事院の意見

 骨太の方針にある「2018年の人事院の意見の申出」とは、2018年8月10日に、人事院が、国会及び内閣に対して行った「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」のことです。

その「骨子」*1を見ますと、「定年の引き上げの必要性」として、4つの項目が記載されています。

  • 意欲と能力のある高齢者が活躍できる場を作っていくことが社会全体の課題
  • 現在の再任用制度*2では、職員の能力と経験を十分にはいかしきれない。
  • 質の高い行政サービスの維持のため、60歳超の職員の能力と経験の活用が不可欠
  • 定年の引き上げを円滑に進める観点からフルタイム再任用拡大が必要

 

いかがでしょうか。

定年制延長の「必要性」として納得できますでしょうか。

1番目は、それはそうでしょうと同意することはできますが、定年制の延長にはストレートに結びつきません。

2番目は、それなら再任用制度を改善してはどうですか、と言いたくなります。

3番目も、それはそうかもしれないけど、それは一部の職員でしょ、と思ってしまいます。

4番目は、定年延長の「必要性」になっていません。

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(3) 定年延長の本音

人事院が掲げる必要性は、いずれも建前、後からつけた理屈に見えます。

本音のところは、やはり公務員の収入確保・生活保障ということでしょう。

60台前半の特別支給の厚生年金の経過措置が終了し、2022年度に60歳定年を迎える人からは、すべて年金支給開始が65歳になることから、収入の面で定年から年金までをつなぐ必要があります(民間の女性労働者は5年遅れで経過措置が終了)。

 

そのため、現在は再任用制度が実施されていますが、民間での再雇用の場合は、フルタイム勤務が多いのに対して、公務員の場合は短時間勤務が多いことから、現役の時に比べると給与が大幅減額になっています。

そこで、定年を延長して、給与も現役のときの7割を支給しようということです。

人事院は「質の高い行政サービス」などと言っていますが、そんなことは表向きであって、要するに、60歳超公務員の収入確保策のための定年延長です。

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3.公務員の定年延長は必要か?

結論から言えば、以下の理由から「必要なし」というのが、現時点における私の意見です。

再任用制度の検証、見直しなど、先に行うことがあると考えます。

 (1) 公務労働現場の流動性を阻害する。

定年延長で、60歳以上高齢者を公務労働に、今まで以上に固定することになります。

それは、組織の風通しを悪くさせ、変化の激しい社会に対応する能力を減退させてしまうことになります。

人事院は、「質の高い行政サービスを維持するには、60歳超の職員の能力と経験の活用が不可欠」と言いますが、それはごく一部の職員には当てはまると思いますが、多くの場合、現役のときの「経験」は役に立ちません。

必要な職員の「能力」は、かえってこれまでの「経験」を捨てて新しい状況に対応していくことになると思います。

 (2) 国家公務員に「質の高いサービス」を期待できない。

コロナ対策のゴタゴタ、数々の政治的疑惑への公務員の関与など、最近のさまざまな状況を見ますと、そもそも国家公務員には、「質の高いサービス」を期待することはできないと思ってしまいます。

財務省佐川元理財局長の国会での答弁の様子が目に浮かびますが、平気でウソを言い、公文書を改ざんし、都合の悪いものはシュレッダーにかけるなど言語道断な行状を繰り返している国家公務員は信用できません。

そんなひどいヤツはごく一部というのはわかりますが、それを告発することなく、同じ組織の一員として保身を図っている他の公務員もほとんど同罪でしょう。

公務員の定年を延長しても、「質の高いサービス」につながる保証はどこにもありません。

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(3) 優秀な国家公務員は若いうちに転職する。

今年3月15日付(電子版3月14日)の日経新聞は、「公務員 転職希望が急増」という見出しで、国家公務員の離職者が3年連続で増加したこと、特に外資系やIT企業に転じる20代が目立つことなどについて報じました。

また、優秀なものほど早期退職してスタートアップを起業するという記事を見た記憶もあります。

同新聞の7月25日付の記事では、内閣人事局が行った国家公務員の意識調査では、30歳未満の男性官僚のうち7人に1人が数年のうちに辞職する意向であることを伝えています。

 

長時間労働、やりがいのなさが主な理由でしょうが、それとともに、先輩職員たちの体たらく、公務員としての矜持もないような振る舞いにあきれて、辞めていく職員も多いのではないかと思います。

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ですから、60歳まで残っている人が優秀であるとは限りません。

旧態依然たる役所の雰囲気の中で長年生き延びてきた人たちですから、そんな人が国民のためになる仕事をするとは期待できません。

 

コツコツとまじめに仕事に取り組んでいる公務員がいることは間違いありません。

それらの人たちの60歳以後の選択の幅が広がることは良いことですが、それと国民のための質の高いサービスとは、残念ながらイコールではありません。

 

今回は、公務員(主に国家公務員)の定年延長は必要ないのではないか、ということにつて愚見を述べさせていただきました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

(2020.08.21)

 

 

*1:https://www.jinji.go.jp/iken/30mousidekossi.pdf

*2:公務員の場合は雇用契約によらない任用制度ですので、定年退職後の継続就労も、民間企業のように「再雇用」とは言わず、「再任用」と言います。