【年金制度改革法成立】④国民年金の改正について(未婚のひとり親の保険料免除など)
こんにちは。
年金制度改革法(年金制度の機能強化のための国民年法等の一部を改正する法律)に含まれている改正事項についてお伝えしております。
今回は、未婚のひとり親が保険料全額免除の対象になることなど、国民年金に関する改正事項について確認したいと思います。
※以下、厚労省が公表していますこの改正法律案の概要を「概要」、法律案要綱を「要綱」とします。「概要」には特に重要な改正事項が、「要綱」にはほぼすべての改正事項が記載されています。
- 1. 未婚のひとり親を国民年金保険料の申請全額免除の対象に追加(2021.4.1施行)
- 2. 国民年金手帳の廃止(2022.4.1施行)
- 3.脱退一時金の支給上限年数引上げ(2021.4.1施行)
- 4.年金担保貸付の廃止(2022.4.1施行)
- 5.20歳前傷病による障害基礎年金の所得による支給制限期間の変更(2021.8.1施行)
- 6.寡婦年金を支給しないこととする要件の変更(2021.4.1施行)
1. 未婚のひとり親を国民年金保険料の申請全額免除の対象に追加(2021.4.1施行)
これは、税法の改正に伴うものですから、まず、税法の改正について触れておきます。
(1) 地方税法の改正(2021年分から適用)
(個人の市町村民税の非課税の範囲)地方税法第295条第1項第2号
⇒ [改正後]「障害者、未成年者、寡婦又はひとり親」
※同法第292条で、新しく「ひとり親」が規定され、従前の「寡夫」の規定は削除されています。「寡夫」は「ひとり親」に含まれます。
これまで前年所得が一定額以下の「寡婦(夫)」は市町村民税が非課税でしたが、「寡婦(夫)」とは、生別、死別等によると規定されていますので、未婚の(婚姻歴のない)ひとり親はこれに該当しないために非課税扱いの対象とならず、「不公平」ではないかとの指摘がありました。
そこで、全てのひとり親家庭の子どもに対して公平な税制を実現する観点から、「婚姻歴の有無による不公平」を解消するためとして、今国会で地方税法が改正されました。
(なお、同じ趣旨で所得税法も改正され、「ひとり親」にも寡婦(夫)控除が適用されるようになります。)
(2)国民年金法の改正
[改正前]保険料の全額免除を申請できる者に関する規定(国民年金法第90条第1項)
① 所得が全額免除の基準額以下
② 生活保護法の生活扶助以外の扶助を受ける者
③ 地方税法に定める障害者で前年所得が政令で定める額(※)以下の者
④ 地方税法に定める寡婦で前年所得が政令で定める額(※)以下の者
⑤ その他省令で定めるもの
[改正後]改正前の③④が、次のように改正されます。
地方税法で定める障害者、寡婦、その他の同法の規定による市町村民税が課されない者で、前年所得が政令で定める額(※)以下の者
※政令で定める額:125万円。2021年分から135万円。
この「地方税法の規定による市町村民税が課されない者」に、上記(1)のとおり、地方税法の改正によって「未婚のひとり親」が含まれるようになりました。
2. 国民年金手帳の廃止(2022.4.1施行)
年金手帳を規定していた国民年金法第13条がそっくり削除されました。
厚労省の「概要」には、「国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替え」と記載されています。
3.脱退一時金の支給上限年数引上げ(2021.4.1施行)
短期滞在の外国人が支給対象となる脱退一時金は、加入月数に応じて金額が法定され、加入月数36以上は同額になっていました(附則第9条の3の2第3項)。
改正により、具体的な金額は政令で定めることとされて、「概要」によりますと、支給上限も5年に引き上げられるようです。
「概要」にある年金関係は以上ですが、「概要」には記載されていない改正事項もありますので、「要綱」にしたがって、その他の改正事項について、以下、確認しておきたいと思います。
4.年金担保貸付の廃止(2022.4.1施行)
国民年金法第24条で、年金の受給権の譲渡、担保、差押を原則、禁止していますが、但し書きで、「別に法律で定めるところにより担保に供する場合は、この限りではない」とされ、例外的に年金受給権を担保にして貸し付けを受けることができるようになっています。
今回、この但し書き部分が削除されて、年金受給権を担保に供することは例外なく禁止されることになりました。
同時に「政府は(中略)小口の資金の貸付けを、独立行政法人福祉医療機構に行わせるものとする」と規定していた法第74条第3項も削除されています。
また、業務として、国民年金、厚生年金及び労災保険の年金の受給権を担保として、小口資金の貸付を行うことを定めていた独立行政法人福祉医療機構法第3条第2項も削除されました。
5.20歳前傷病による障害基礎年金の所得による支給制限期間の変更(2021.8.1施行)
通常の障害基礎年金にはなく、20歳前傷病による障害基礎年金のみにある支給制限の一つに、本人の前年所得による制限があります(所得額に応じて全部または2分の1を支給停止)。
その場合の年金の支給が停止される期間が、これまでの「その年の8月から翌年の7月まで」から「その年の10月から翌年の9月まで」に変更されます。(国民年金法第36条の3第1項、第36条の4第1項)
6.寡婦年金を支給しないこととする要件の変更(2021.4.1施行)
寡婦年金の要件は、国民年金法第49条で定められていますが、その但し書きで、「その夫が障害基礎年金の受給権者であつたことがあるとき、又は老齢基礎年金の支給を受けていたときは、この限りではない」と支給しない場合が規定されています。
今回、この但し書き部分が「老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがある夫が死亡したときは、この限りでない」と改正されました。
改正前は、亡くなった夫が障害基礎年金を実際に受けたことがなくても、受給権があっただけで寡婦年金を受給できませんでしたが、改正後は受給できるようになりました。
以上、今回は、これまでお伝えしたこと以外の国民年金法の改正事項についてお伝えしました。
次回は、厚生年金保険法の改正について確認したいと思います。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.06.20)