【国民年金】「寡婦年金」と「死亡一時金」って、何? どんなときにもらえるの?
こんにちは。
公的年金制度は、1階部分の国民年金、2階部分の厚生年金があって、それぞれに老齢、障害、遺族年金があるというのが基本的な形です。
しかし、国民年金には、付加年金、寡婦年金、死亡一時金の3つの独自給付があります。
今回は、このうち寡婦年金と死亡一時金についてお伝えします。
1.寡婦年金って、どんなときにもらえるの?(支給要件)
「寡婦」ですから、これをもらえるのは女性に限られます。
どんなときにもらえるのか?
寡婦年金の支給要件は、以下のとおりです。
(ア)亡くなった夫に関する要件(すべてに該当)
- 死亡日の前日において、第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間と免除期間(学生納付特例期間を除く)を合算して10年以上あること
- 老齢基礎年金の支給を受けたことがないこと
- 障害基礎年金の受給権を有したことがないこと*1
上の1.は、「第1号被保険者期間に係る」というところが大事です。
この制度は、国民年金の独自給付ですから、国民年金保険料の納付済期間と免除期間とで10年以上が必要です。
(イ)妻の要件(すべてに該当)
- 65歳未満であること
- 夫の死亡当時、夫によって生計を維持していたこと
- 夫との婚姻関係が10年以上継続していたこと*2
要するに、ずっと保険料を払い続けてきた夫が、もらえるはずの年金を何ひとつもらわずに死亡してしまったので、夫の代わりに、せめて残された妻に対して、妻が老齢基礎年金をもらい始める65歳まで寡婦年金として支給しましょう、というものです。
どうして「寡婦」? どうして女性だけ支給される? という疑問を持たれるかもしれませんが、法律的には男女平等の世の中とはいえ、まだまだわが国の実態として、働き方及び経済的自立という面においては、なお性差は残っているということだと思います。
その実態に年金制度として対応しているものと思います。
2.寡婦年金の支給期間と額
(1) 支給期間
寡婦年金はもらい始めるとずっともらい続けられるわけではありません。
支給期間のある「有期」の年金です。
▶妻が60歳になる翌月から、65歳になるまでの最大5年間
(夫の死亡当時、妻が60歳以上であれば夫死亡の翌月から)
65歳になれば、妻自身の老齢基礎年金をもらえるようになりますので、それまでの支給です。
したがって、妻が自分の老齢基礎年金を65歳より早くもらう(繰上げ支給)と、そのときから寡婦年金はもらえなくなります。
また、残された妻が再婚した場合などにも、寡婦年金はもらえなくなります。
(2) 寡婦年金の額
それでは、寡婦年金はいくらもらえるのでしょうか?
▶夫がもらうはずであった老齢基礎年金の額の4分の3
したがって、夫の保険料納付済期間及び免除期間によって、年金額は違ってきます。
老齢基礎年金の満額は、月額約65,000円ですから、その場合の寡婦年金は、月額約48,750円になります。
3.死亡一時金って、どんなときにもらえるのか? (支給要件)
(1) 死亡一時金とは?
死亡一時金は、国民年金の保険料を一定期間かけていた人が亡くなった場合に、その遺族に対して支給されるものです。
- 一定期間とは:死亡日の前日において、死亡日の前月までの第1号被保険者として、保険料納付済期間、4分の1免除期間の4分の3、半額免除期間の2分の1、4分の3免除期間の4分の1を合算した期間が36月以上あるものが死亡したこと
- 遺族とは:死亡の当時、生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうちのこの順番で先の順位にある者
(2) 支給要件
次の要件に該当することが必要です。(いずれにも該当)
- 死亡した者が、老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けたことがないこと
- その者の死亡により遺族基礎年金を受ける者がいないこと
また、死亡一時金と寡婦年金を同時に受けられる場合には、選択によりどちらか1つのみを受けることになります。
4.死亡一時金の額
これは「一時金」ですから、1回限りの支給になりますが、その額はいくらでしょうか?
上記の一定期間に応じて下記のように定額です。
保険料納付済等の期間 | 金額 |
36月以上180月未満 | 12万円 |
180月以上240月未満 | 14.5万円 |
240月以上300月未満 | 17万円 |
300月以上360月未満 | 22万円 |
360月以上420月未満 | 27万円 |
420月以上 | 32万円 |
5.さいごに
人の死亡に関する年金としては、もちろん遺族年金が基本になりますが、今回は、国民年金第1号被保険者に係る独自給付の「寡婦年金」「死亡一時金」についてお伝えしました。
以上は、あくまでも制度の概要です。
実際のケースにおいては、死亡された人及び残された遺族の状況に応じて受給できる年金も異なってきます。
制度内容が複雑ですので、具体的な事案につきましては、年金事務所、市区町村の年金担当課、社労士等に相談してください。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.10.9)