【障害年金】2つの障害年金、3つの支給要件
こんにちは。
今回は、障害年金の基本的なことについてお伝えしたいと思います。
1.社労士を目指したきっかけ
(1) 知り合いの実例
実は、私が、社労士になろうと思ったひとつのきかけは、この障害年金にあります。
私の知り合いであるAさんの子どもさんが、20代で思わぬ障がいを得て治療を要するようになり、仕事も中断せざるを得なくなったのです。
しかし、国民年金に未加入、あるいは保険料をきちんと納付していなかったかで、障害基礎年金を受給できませんでした。
そこで、治療費とその子どもさんの生活費も、Aさんの負担となったのでした。
Aさんは、もっと年金のことを考えておけばよかったと悔やんでいました。
(2) 仕事でも
定年後に、再任用公務員として仕事しているときにも同じような経験をしました。
年金の制度を知らないために、受給できるのに請求していない人が何人もいたのです。
私も、当時はよく制度内容をわからないまま、詳しい人に尋ねながら請求手続きをサポートして、何人かの人が障害年金を受給できるようになりました。
なかには、5年間遡及して年金が支給されたケースもありました。
障害基礎年金の2級は、老齢基礎年金の満額と同額ですから、今年度だと781,700円。
5年分だと、約390万円!
そうでなくても、障害基礎年金の月額約65,000円は、毎月の家計を助けるくれる金額だと思います。
(3) 制度を人々に届ける
以前のブログにも書いたことがありますが、上記のようなことから、まだまだ制度を知らない人たちがたくさん存在している、制度を知っていれば受給できるものを、知らないために受給していない、制度をいちばん必要としている人たちがいちばん制度情報から遠いのではないか、との思いが強くなりました。
そこで、制度を必要としている人たちに制度情報をきちんと伝えて、利用できるものを利用して、少しでも生活しやすい状況になってもらいたい。
そのためには、年金の手続きを手伝うことができる社会保険労務士になる必要があると思ったわけです。
2.2つの障害年金、3つの支給要件
(1) 2つの障害年金
公的年金は、2階建てになっていて、1階部分が共通の国民年金、2階部分が厚生年金です。
厚生年金加入者は、同時に国民年金加入者(第2号被保険者)になります。
したがって、障害年金も、国民年金の障害基礎年金と障害厚生年金の2つがあり、障害基礎年金だけを受給する人もいれば、2つを同時に受給する人もいます。
(2) 3つの支給要件
障害年金において、いつも念頭に置いておかなければいけないのが、次の3つの支給要件です。
- 初診日要件
- 障害認定日要件
- 保険料納付要件
年金を受給するためには、3つの要件すべてを満たす必要があります。
(3) 初診日要件
まず、初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を言います。
そして、初診日要件とは、
▷障害基礎年金においては、
- 初診日において被保険者であること。又は、
- 被保険者であった者であって、日本国内の住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であること。
▷障害厚生年金においては、
初診日において、厚生年金の被保険者であること。
要するに、原則として、初診日の時に、それぞれの被保険者でなければならないということです。
障害基礎年金の場合は、上記の(イ)や20歳前の傷病による障害基礎年金のように例外もありますが、障害厚生年金においては、例外はありません。
(4) 障害認定日要件
まず、障害認定日とは、初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては、その治った日(症状が固定化し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む))のことです。
そして、障害認定日要件とは、
▷障害基礎年金においては、
障害認定日において、障害等級1級又は2級に該当する程度の障害の状態にあること
▷障害厚生年金においては、
障害認定日において、障害等級1級、2級又は3級に該当する程度の障害の状態にあること
障害基礎年金は1級、2級ですが、障害厚生年金は3級まであるところに違いがあります。
障害等級基準は、共通です。
障害部位ごとに詳しい障害等級基準は、日本年金機構のホームページで確認することができますが、大まかに言って、
1級は、他人の介護を受けなければ日常生活を送ることが難しい状態、
2級は、必ずしも他人の介護を必要としないが、日常生活上、非常な困難性があって、労働することが難しい状態、
3級は、労働に制限を受ける状態です。
(5) 保険料納付要件
これについてはこれまでも何度も述べてきましたが、とにかく「保険料の免除を利用してでも、3分の2を守れ!」と口を酸っぱくして言いたいです。
保険料納付要件の内容は、障害基礎年金と障害厚生年金に共通です。
原則と特例があります。
▷原則
初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるときは、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2以上であること。
▷特例
初診日が令和8年(2026年)4月1日前にある傷病による障害については、当該初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間(保険料未納期間)がないこと(当該初診日において65歳未満である者に限る)。
表現がまどろっこしいかもしれませんが、簡単に言えば、原則は、20歳から初診日までに保険料滞納期間が3分の1以上ないこと、特例は、初診日の直前1年間に滞納が全くないことということになります。
そして、要件該当の可否は、「初診日の前日において」の状況で判断されるということも強調しておきたいと思います。
例えば、気分が落ち込んで仕事に出る気がしなくなって、精神科クリニックに行き、その結果、「うつ病」とか「うつ症状」とか診断をされたので、障害年金を請求しようと、あわてて未納になっていた年金保険料を納付したとしても、「初診日の前日」には未納状態ですので、保険料納付要件は「非該当」になってしまいます。
人はいつ病気になるかわかりません。
いつけがをするかわかりません。
ですから、常に保険料納付要件を満たしておくことが重要です。
今回は、2つの障害年金、3つの支給要件についてお伝えしました。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.10.03)