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【老齢厚生年金】雇用保険(基本手当)との調整はどうしてある?

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こんにちは。

60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金を受給しながら仕事をしている人が、仕事を辞めて、ハローワークに行って求職の申し込みをした場合、その翌月から年金が全額支給停止されます。

今回は、このような年金と雇用保険との調整について考えてみたいと思います。

 

失業すると、収入の途が2つから1つになる

就業中は、年金の月額と給料月額(当月以前12か月中の賞与の額の12分の1の額を含む)との合計額が28万円(47万円に改正予定)を超えたらその超えた分の2分の1が支給停止されるという在職老齢年金のしくみがありますが、それでも年金給料2つの収入があります。

しかし、仕事を辞めると、給料がなくなることに加えて、年金も支給停止されることになって、雇用保険(基本手当)のみの収入になります。

もちろん、失業しても、ハローワークに行かなければ、年金は停止されませんが、いずれにしても、年金か基本手当かのどちらか1つのみの収入になることには変わりありません。

 

どうしてこのような年金と雇用保険(基本手当)との調整のしくみがあるのでしょうか。

なお、この調整は、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金が対象であり、65歳以上の老齢厚生年金は調整の対象にはなりません。

平成6年の年金制度改正で導入された

以前は、特別支給の老齢厚生年金と雇用保険(基本手当)は併給されていましたが、平成6年の年金法改正によって、この調整の仕組みが導入され、平成10年4月から施行されています。

この法改正の際に発出された国の通知(平成6年11月9日付都道府県知事あて厚生事務次官通知「国民年金法等の一部を改正する法律の施行について」)には、「60歳台前半の老齢厚生年金の見直し」として、次のように記載されています。

年金制度も人生80年時代にふさわしい制度にしていくため、雇用と年金と連携を図りつつ、年金制度自身を雇用促進的な仕組みに改める必要がある。

このため、高齢者の生活設計について、60歳前は賃金を中心とし、60歳台前半は雇用の促進を図りつつ、賃金と年金を中心として生活を支える期間と位置付け、65歳以降は年金を中心として生活が行える期間と位置付けるという観点から、60歳台前半の年金については、65歳以降の年金とは別個の給付として構成し、その額については報酬比例部分相当の年金としていくこととした。

要するに、60歳台前半の人は、仕事による給与収入と年金収入を合わせて生活することが求められていて、いったん失業しても、雇用保険(基本手当)を貰うのは短期間にして、できる限り速やかに再就職してください。

そのため(「雇用の促進」のため)、雇用保険(基本手当)を受けている間は年金を停止するのですよ、ということのようです。

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年金も雇用保険も両方貰いたい?

国が勝手に決めた生活設計に合致させるために、年金と雇用保険のどちらか一方だけを支給するのは許せない。

雇用保険については雇用保険料を、厚生年金については厚生年金保険料を払っているではないか。

したがって、両方とも受給する権利がある。

それなのに勝手に支給を止めるとは何事だ! と言いたくなります。

制度の側は何と答えるでしょうか。

 

年金は積立方式ではなく、賦課方式であり、あなたの年金の原資は、あなたが払った厚生年金保険料ではなく、現役の人たちが払っている保険料です。

あなたが支払った保険料は、その時に年金を受給していたあなたの先輩たちの年金として使われています、ということでしょうか。

また、その人が支払った年金保険料の額と、その人が受け取る年金の額との間には、直接の関係はない、年金は支払った年金保険料の「対償」として支給されるわけではない、ということかもしれません。

例えば、20歳になってすぐに厚生年金のある会社に就職して、勤め始めたその日にけがをして障がい者になっても、その他の要件に合えば、障害厚生年金は出ますし、その日に死んだとしても、その他の要件に合えば、遺族厚生年も支給されます。

老齢厚生年金だけ、保険料を払ったから年金を出せ、というわけにはいかないようです。

在職老齢年金についても、給料の額によって、勝手に年金を減らされています。

[給料+年金]が、[年金or雇用保険(基本手当)]になって収入減になるのは悔しいですが、制度としては仕方ないものとして諦めざるを得ないようです。

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65歳まで働くことができる社会は実現した

しかし、ここで気になることがあります。

上記の国の通知の別の箇所には、

21世紀初頭には希望すれば65歳まで働くことができる社会の実現が図られるよう、高齢者の雇用を促進し、公的年金制度をこれと連携のとれた仕組みとする。

とも記載されています。 

いま現在、65歳までの雇用確保措置の達成率はほぼ100%ですから、通知からおよそ25年経って、「希望すれば65歳まで働くことができる社会」は実現した、と言ってもいいでしょう。

国は、今年の国会に70歳までの就業確保措置を努力義務とする法案を提出予定です。

この努力義務は、やがて義務になるかもしれません。

すると、「60歳台前半は雇用の促進を図りつつ、賃金と年金を中心として生活を支える期間と位置付け」の「60歳台前半」を「60歳台後半」に置き換えてもおかしくないことになります。
 
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60歳台後半でも調整が???

平成29年1月から、65歳以上高齢者も雇用保険の加入者となることができるようになりました。

ただ、失業したときに受ける高年齢求職者給付金は一時金です。

60歳台後半の就業確保措置も、前述のように、まずは努力義務になります。 

60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金は、現在、順次、支給開始年齢が引き上げられていて、実施令和7年3月末で終了することになっています(一般女性は5年後)ので、いまの年金と雇用保険(基本手当)の調整のしくみもなくなります。

したがって、すぐに、ということはありませんが、やがて、65歳台後半に失業したときの雇用保険の給付が一時金ではなく、今の基本手当と同じようなかたちになれば、60歳台後半の雇用の状況を見ながら、60歳台後半でも老齢厚生年金雇用保険調整のしくみが導入されて、仕事を辞めて求職活動をすると、年金が停止されるかもしれません。

特別支給の老齢厚生年金ではなく、本体の老齢厚生年金まで調整を入れるか、ということについては、すでに在職老齢年金の制度は65歳以上まで対象としていることから、制度側としてはそんなに躊躇することはないと思われます。

あるいは、老齢厚生年金の支給開始年齢を70歳にして、それまでは特別支給の老齢年金として、経過的に支給することになるかもしれません。

現在の60歳台前半のしくみを、そっくり60歳台後半にずらすイメージです。

諸外国の状況を見ても、早晩、70歳とは言わないまでも、67歳68歳までの年金支給開始年齢の引き上げが大きなテーマとして論議されることはほぼ確実でしょう。

その結果として、制度の見直しが年金と雇用保険との調整にも波及するかもしれません。

今回は、60歳台前半における年金と雇用保険との調整について、導入当時の国の通知を確認しながら考えてみました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
 (2020.03.04)(一部修正 2020.06.20最終)

 

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