【GPIFの2019年度資産運用】第4四半期には18兆円、年度では8兆円の赤字!
こんにちは。
7月初めに、国民の厚生年金と国民年金の保険料を預かって、運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2019年度の運用実績が、8兆2831億円の赤字であったことが報道されました。
これは、リーマン・ショックの時の2008年度の9兆3481億円に次いて、過去2番目に大きい赤字額になります。
今回は、GPIFの運用実績についてお伝えしたいと思います。
1.2019年度の運用実績
GPIFのホームページの「2019年度業務概況書」に2019年度の運用実績が、資産ごと、四半期ごとに出ていますので、それを見てみます。
この結果、GPIFの運用資産は、下の表2のようになりました。
年度初め159兆円あったのが、年度末には150兆円に減っています。
8.3兆円の赤字額は、年度当初の運用資産のおよそ5%になります。
これには3.2兆円のインカムゲイン(利子・配当収入)を含みますので、本当のところ、2019年度のGPIFの運用における赤字額(損失額)は11.5兆円になると思います。
(a)第4四半期:国内株式の運用
表1を見ますと、コロナ危機による世界的な株価暴落の影響をまともに受けた第4四半期(1-3月)の17兆7千億円の大幅赤字が目立ちます。
特に損失額の大きい第4四半期の株式についてみてみます。
◆国内株式の資産の変動
2019年3月末の資産総額約159.2兆円と、国内株式の資産構成割合23.55%(2018年度業務概況書)から、年度当初の国内株式の資産額37.5兆円と推計。
これに、表1の第1四半期から第3四半期までの運用損益の合計額4.7兆円を単純に足して、第4四半期初の国内株式の運用資産の額は42兆円程度と推計。
この期の損失額7.4兆円、これは資産額の約18%に相当します。
(2019年度業務概況書:この期における国内株式の収益率-17.63%)
◆この間の日経平均株価の変動状況
12月末の終値23,656円、3月末の終値18,917円。下落率20%。
◇結論
第4四半期における国内株式に係るGPIFの運用成績は、市場よりややプラス、あるいは、収益に潜在的に含まれるインカムゲインを考慮すれば、市場と同等であったと言えるのではないかと思います。
(b)第4四半期:外国株式
◆外国株式の資産の変動
2019年3月末の資産総額約159.2兆円と、外国株式の資産構成割合25.53%(2018年度業務概況書)から、年度当初の外国株式の資産額40.6兆円と推計。
これに、表1の第1四半期から第3四半期までの運用損益の合計額3.7兆円を単純に足して、第4四半期初の外国株式の運用資産の額は44兆円程度と推計。
この期の損失額10.2兆円、これは資産額の約23%に相当します。
(2019年度業務概況書:この期における外国株式の収益率-21.88%)
◆この間のNYダウ平均株価の変動状況
12月末の終値28,538ドル、3月末の終値21,949ドル。下落率23.1%。
◆この間のNASDAQ総合指数の変動状況
12月末の終値8972.6、3月末の終値7700.1。下落率14.2%。
◇結論
単純にみれば、第4四半期におけるGPIFの外国株式の運用成績は、NYダウの動きとほぼ同等、NASDAQからは大きく下回ったことになります。
もちろん、GPIFは、「ユニバーサル・オーナー」として、主要な海外企業の株式を幅広く保有していますので、NYダウとNASDAQとだけ比較して云々するということはできません。
ただ、GPIFのホームページで公表されている保有全銘柄(今年3月末)を見ますと、およそ2700銘柄の外国株式のうち、時価総額別順位の第1位マイクロソフト(時価1兆1576億円)、第2位アップル(同1兆791億円)、第3位アマゾン(同8263億円)、以下フェイスブック、アルファベット(グーグル)など、上位はほとんどNASDAQ銘柄であるところからすると、この間のGPIFの運用は、市場をかなり下回る成績であったということができるのではないかと思います。
参考(2019年度中の変動)
◆GPIFの収益率(業務概況書)
国内株式 - 9.71%
外国株式 -13.08%
◆各指標
日経平均株価変動率 -10.8%
TOPIX 〃 -11.8%
NYダウ 〃 -15.3%
NASDAQ 〃 -0.4%
2.これまでの実績(類型収益額)
2019年度の運用実績を見ましたが、これまでの状況はどうであったか、確認しておきたいと思います。
GPIFの運用における累積収益額(2001年度~2019年度)+57兆5,377億円
2008年度、2019年度のように、大きく収益額が赤字になってしまう年度もありますが、約20年で57兆円を稼いでいます。
また、このうち約65%の37兆1,412億円はインカムゲインによるものです。
今回は、GPIFの2019年度の運用実績についてお伝えしました。
次回は、GPIFとはいったい何者? 年金財政におけるGPIFの役割ということについて確認したいと思います。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.07.24)