【少子化対策】出生率は4年連続して低下、男性の育休取得率は目標に遠い状況
こんにちは。
今回は、少子化の象徴的な指標である合計特殊出生率と、少子化対策の進捗状況を示す男性の育児休暇取得率について、お伝えしたいと思います。
1. 我が国の合計特殊出生率
(1) 最近の合計特殊出生率の推移
6月5日、厚労省から人口動態統計が公表されました。
それによりますと、2019年の合計特殊出生率は、1.36と、昨年より0.06ポイント低下し、4年連続の低下となりました。
最近10年間の推移は下表のとおりです。
最近10年間の特殊合計出生率の推移 | |
2010年 | 1.39 |
2011年 | 1.39 |
2012年 | 1.41 |
2013年 | 1.43 |
2014年 | 1.42 |
2015年 | 1.45 |
2016年 | 1.44 |
2017年 | 1.43 |
2018年 | 1.42 |
2019年 | 1.36 |
わが国の合計特殊出生率は、1970年代前半までは2.0を超えていましたが、徐々に低くなって、2005年に1.26と過去最低の数値を示しました。
その後、上昇傾向にありましたが、2015年1.45になって以降、ふたたび低下しています。
(2) 政府の目標
5月29日に閣議決定された少子化社会対策大綱(第4次)において、「少子化対策における基本的な目標」として「希望出生率1.8」と、従来の目標を維持しました。
1980年頃の合計特殊出生率が1.8前後でしたから、わが国は、およそ40年前の出生率を回復するのが目標ということになります。
◆「希望出生率」って何?
ところで、政府は、「希望出生率」などと変な名称を付けて目標値を示していますが、この「希望出生率」の出所は、まち・ひと・しごと創生長期ビジョン (令和元年改訂版)にあります。
そこには、
18~34 歳の独身者は、男女ともに約9割は「いずれ結婚するつもり」と回答しており、また、結婚した場合の希望子ども数は男性1.91人、女性2.02人となっている。さらに、夫婦の予定子ども数は2.01人となっている。こうした希望等が叶うとした場合に想定される出生率を「国民希望出生率」として、一定の仮定に基づく計算を行えばおおむね 1.8 程度となる
と記載してあります。
2.合計特殊出生率の国際比較
それでは、他国の出生率の状況はどうなっているのか見てみます。
フランス | 1.88 |
スウェーデン | 1.76 |
オーストラリア | 1.74 |
デンマーク | 1.73 |
米国 | 1.73 |
英国 | 1.68 |
ドイツ | 1.57 |
カナダ | 1.50 |
イタリア | 1.29 |
韓国 | 0.98 |
中国 | 1.69 |
タイ | 1.53 |
インドネシア | 2.31 |
GLOBAL NOTE 2018年 |
子育て政策で目立った成果を上げていると評価されてきたフランスは、さすがの数値を示していますが、それでも最近は、出生率が低下しているようです。
一方、ドイツでは上昇傾向のようです。
6月6日付の日経新聞の記事には、
ドイツは父親が積極的に育児に参加している。18年は、1.57と0.19ポイント上昇した。独政府は13年から1歳以上のすべての子どもに対して保育を受ける権利を保障した。/父親の育休取得率は19年時点で35.8%になった。
とありました。
男性の育児休業取得率は、子どもを産み育てやすい社会づくりにプラスの効果があることを示唆しています。
そこで、次に男性の育休取得率について確認したいと思います。
3.男性の育休取得率
(1) 政府の目標
政府は、男性の育児休業取得率を2020年までに13%とする目標を掲げています。(内閣府男女共同参画局のホームページ)
(2) 育休取得率の推移
それでは、実績値はどうなっているでしょうか。
厚労省の雇用均等基本調査で確認してみます。
男性の育休業種得率の推移 | |
2009年 | 1.72 |
2010年 | 1.38 |
2011年※ | 2.63 |
2012年 | 1.89 |
2013年 | 2.03 |
2014年 | 2.30 |
2015年 | 2.65 |
2016年 | 3.16 |
2017年 | 5.14 |
2018年 | 6.16 |
※岩手、宮城、福島を除く。 |
最近、上昇傾向にあることは大変喜ばしいことですが、目標の「2020年までに13%」の達成は、ちょっと難しいのではないでしょうか。
(3) 男性の育児休業期間は、たった5日間?
政府も、育児休業期間中の労使双方の社会保険料負担をなくしたり、子どもが保育園に入所できない場合には、子が2歳になるまで育児休業を取得できるようにするなど、いろいろ対策を講じてきていますが、なかなか目立った成果は上がっていないというのが現状です。
また、厚生労働省職業生活両立課資料「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について」(令和元年7月3日)によりますと、
育児休業の取得期間は、女性は9割近くが6か月以上となっている一方、男性は、5日未満 が56.9%、8割以上が1か月未満となっている。
とのことで、男性の育児休業に関しては、取得率の低さとともに、取得した休業期間などの課題もあるようです。
取得率が上昇しても、休業した期間が5日未満であれば、育児に対する父親の貢献の度合いははなはだ心もとない限りです。
うがった見方をすれば、育休取得が、育児そのものよりも、対外的に育休取得率を上げることが目的になっていはしないかと思ってしまいます。
(4) 育児休業給付金の給付率アップ?
2月9日付日経新聞(電子版)は、男性の育児休業取得を促進するために、
政府は育児休業給付金の支給水準を引き上げる検討に入った。賃金の最大67%の給付率を80%まで引き上げる案が現段階で浮上している。/
3月末までに策定を目指す「少子化社会対策大綱」に、給付率引き上げを盛り込む方向で検討している。
と、報じました。
しかし、少子化社会対策大綱には、「育児休業を取得しやすくする。」「男性の育児休業取得や育児参画を促進するための取組を総合的に推進する。」などの記載はありますが、「育児休業給付金」の文言はありません。
日経新聞の記事が危惧していたように、財源問題のために大綱の表現が後退したのかもしれません。
今後の状況を観察する必要があるようです。
今回は、わが国の合計特殊出生率と男性の育児休業取得の状況についてお伝えしました。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.07.18)