【ネットカフェ難民の実態調査】②社会保険制度は国民全員をカバーすべきではないか?
こんにちは。
前回から、東京都が、平成28年11月から平成29年1月にかけて実施した実態調査の結果を見ながら、いわゆるネットカフェ難民の状況について確認しています。
その2回目になります。
サンプル数 363(男性354、女性9)
労働形態別(正社員16、不安定就労271[派遣労働者126、契約社員16、パート・アルバイト129]、自営業19)。
その他、失業者(仕事を探している)、無業者(仕事を探していない)
社会保険の状況
(14)雇用保険
「加入している」
パート・アルバイト3.1%、自営業0%
「よくわからない」
正社員0%、派遣18.3%、契約43.8%、
パート・アルバイト27.9%、自営業31.6%
「加入していない」
正社員0%、派遣72.2%、契約25.0%、
パート・アルバイト66.7%、自営業63.2%
(15)健康保険(保険証を持っている)
「加入している」
正社員87.5%、派遣4.0%、契約12.5%、
パート・アルバイト3.9%、自営業0%
「よくわからない」
正社員0%、派遣23.8%、契約43.8%、
パート・アルバイト17.8%、自営業10.5%
「加入していない」
正社員0%、派遣66.7%、契約31.3%、
パート・アルバイト76.0%、自営業84.2%
(16)年金
「厚生年金に加入している」
正社員5.9%、派遣9.5%、契約6.3%、
パート・アルバイト2.3%、自営業0%
「国民年金に加入している」
正社員18.8%、派遣15.1%、契約6.3%、
パート・アルバイト0.8%、自営業0%
「よくわからない」
正社員31.3%、派遣47.6%、契約6.3%、
パート・アルバイト3.1%、自営業0%
「加入していない」
正社員0%、派遣21.4%、契約68.8%、パート・アルバイト91.5%、自営業94.7%
◆考察
以上、(14)(15)(16)の社会保険の加入状況に関する調査結果は、いろいろ考えさせられる内容です。
調査対象の「住居喪失者」が就いている業種は、「建設関係」「運転・運搬・倉庫関係」が多くなっていますから、前回にご紹介しました「現在、フルタイムで働いている」人たち(正社員81.3%、派遣88.9%、契約81.3%、パート・アルバイト7.0%)は、通常、雇用保険、健康保険、厚生年金はすべて(あるいは、ほとんど)「加入している」にならなければいけませんが、実態調査の結果ではそうはなっていません。
これは、制度的には「常用労働者5人未満」の零細事業所に勤めている人が圧倒的に多いか、または、労働者として適用除外(2か月以内の有期雇用契約など)に該当する場合が多いことが想定されますが、それにしても「加入している」割合が異常に低いように思います。
正社員の場合は、雇用保険と健康保険は良いとしても、厚生年金の加入率が低すぎます。
通常、健康保険と厚生年金の適用関係は同じはずですので、ちょっと理解に苦しみます。
フルタイム就労が9割になる派遣労働者の社会保険加入も異常に低い数値になっています。
適用除外に該当するような不安定な契約関係になっているとしか思えません。
また、「よくわからない」という人の割合も高く、社会保険という重要な労働条件さえ承知していない人が多くいることになります。
労働契約書とか労働条件通知書とか、労働基準法に規定する文書の交付を受けていないのではないかと思います。
さらには、国民皆年金で、厚生年金に加入しない人は全員(20~60歳、厚生年金被保険者の被扶養配偶者を除く)、国民年金に加入しなければいけませんが、特にパート・アルバイトでは9割以上が国民年金にも加入していません。
これらを見ますと、制度としては、零細事業所や短期の有期雇用契約で働く人など、社会保険の対象外となっていますが、実態としては、本来、社会保険加入者であるべき人の多くも加入していない印象を受けます。
国の制度は、本来、制度の組み立てとしても、実態としても、業種や事業所の規模等に関わらず、国民全員をカバーすべきではないでしょうか。
現在は、制度としても、実態としても、立場の弱い人ほど社会保険等の社会保障のセーフティネットから漏れているように見えます。
本当は、これらの人々をこそ社会保障で守るべきではないでしょうか。
相談できるところ・人
(17)相談できる場所の認知・実際に相談した場所
生活や健康、就業について相談できる場所の中では、「ハローワーク」(85.4%)、「区市町村の生活・就職相談窓口」(71.1%)、「福祉事務所」(55.1%)の認知度が高くなっています。
実際に、相談したことがある場所としても、「ハローワーク」(39.1%)、「区市町村の生活・就職相談窓口」(22.9%)、「福祉事務所」(14.9%)の順になっていますが、一方、37.7%が「どこにも相談したことがない」人です。
相談機関の認知度と実際の利用の間には大きな差があります。
(18)相談できる場所を利用しない理由
「特に相談する必要がないと思うから」39.9%
「過去に相談した際に断られた」31.7%
「相談の手続きが面倒だから」30.9%
後の2つの項目は、各相談機関は肝に銘じるべき事柄です。相談者にとって、いかに満足を得られる相談対応をするか、より敷居を低くするにはどうすればよいか、常に配慮することが必要です。
また、「相談する必要がないと思う」ということの中には、制度や行政サービスに関する情報をよく周知していないという制度運営者側の責任に係る部分を含まれているのではないかと思います。
(19)悩み事等を相談できる人
「相談できる人はいない」41.3%、「友人」35.3%が多くなっています。
パート・アルバイトでは「相談できる人はいない」が半数を超えています。
以上、東京都の実態調査によって、ネットカフェ難民と言われる人たちの状況について、2回目の今回は、社会保険の加入状況等について確認しました。
それぞれの事情を抱えて、住居を失って、やむを得ずネットカフェ等で寝泊まりしている人たちがいます。
コロナウイルスのためにそこから出ていかざるを得なかった人たちの行く先が懸念されます。
東京都が用意したビジネスホテルの緊急宿泊施設も5月末が期限のようです。
そのときに、ネットカフェ等の休業要請が解除されて利用できるようになっていればまだしも、そうでない場合は、できるだけ早く行政の相談機関や民間支援機関に相談してもらいたいと思います。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.05.31)(一部修正 2020.06.23最終)