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【短時間労働者】厚生年金の適用拡大は、「とりあえずは」歓迎すべきことだ!

こんにちは。

このブログでも触れてきましたが、わが国の年金制度改革においては、厚生年金の適用拡大というのが一つの大きな流れになっています。

これは、年金の支え手を増やすとともに、厚生年金加入によって将来もらう年金額を増やすことで、低額年金で生活に困窮する高齢者を減らすことが目的です。

1.社会保険の適用拡大

 社会保険(ここでは、厚生年金健康保険。この2つの制度は、だれをその制度の加入者にするかという「適用」関係においては同じ取り扱いになっています。)は、もともと通常労働者(フルタイム)の1週当たり所定労働時間、又は1月当たり所定労働日数の4分の3以上の労働者に対して適用されるものです(4分の3基準)*1

しかし、非正規労働者、パート労働者等の増加によって、この4分の3基準に該当せず厚生年金の加入者にならない人たちが増えますと、保険料収入が減って年金財政に支障をきたしますし、将来的に少ない年金額しかもらえない高齢者も増えてしまいます。

 

そこで、2016(平成28)年10月から、下記の条件のもとに4分の3基準に該当しない短時間労働者も社会保険の加入者とすることとされました。

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2.短時間労働者に対する厚生年金適用の条件

次の5つの条件すべてに該当する場合は社会保険の加入者となります。

  1. 労働者数500人超社会保険適用事業所で働いている
  2. 1年以上雇用される見込みがある
  3. 1週間の所定労働時間が20時間以上である
  4. 報酬月額88,000円以上である
  5. 学生等ではない

そして、上記①の条件は、今年5月の法改正により、2022年10月から100人超に、2024年10月から50人超に緩和されることになっています。

また、②の条件も2022年10月から2か月以上の雇用見込みになるようです。

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3.適用拡大の影響

 (1) 年金制度のしくみ

わが国の年金制度はいわゆる「2階建て」になっており、1階の国民年金の上に2階の厚生年金が乗っかっています。

国民年金の加入者は、次のように3種類に分けられます。

厚生年金加入者は、同時に国民年金加入者(第2号被保険者)でもあります。

この人たちは、給料から天引きされる厚生年金保険料の中に国民年金の保険料部分が含まれていますので、国民年金保険料を別に支払う必要はありません。

また、この厚生年金加入者に扶養されている配偶者(20歳以上60歳未満。第3号被保険者)は、厚生年金全体で国民年金保険料部分を負担しますので、国民年金保険料を支払う必要はありません。

厚生年金加入者及びその扶養配偶者以外の人が第1号被保険者(20歳以上60歳未満。小規模自営事業主、その家族、無職者、及び厚生年金の適用されない4分の3未満の短時間労働者)として国民年金に加入して保険料(掛け金)を支払っています(「皆年金」制度で強制加入)

社会保険の適用拡大ということは、第1号被保険者と第3号被保険者から第2号被保険者に移る人が増えるということです。

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 (2) 被扶養配偶者(3号)にとっての適用拡大の影響

◆メリット

 将来もらう老齢年金の額が増える

◆デメリット

これまで払っていなかった厚生年金保険料と健康保険料を支払うので手取り収入が減る

 

これから何年働けるかにもよりますが、将来の年金額より目先の手取り収入の減額を嫌って、月額報酬が88,000円以上にならないように就労日数を調整する場合もあると思われます(106万円の壁)。

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(3) 短時間労働者(1号)にとっての影響

ここのところが、今回いちばんお伝えしたい点です。

と言いますのは、パート、アルバイト等、短時間労働者にとって社会保険の適用拡大は、とりあえずはメリットばかりで、デメリットはないと思うからです。

 

厚生年金保険料を支払うことで、国民年金保険料も支払ったことになりますので、これまで支払っていた国民年金保険料を、以後支払う必要はありません。

国民年金保険料は定額で、月額16,540円(今年度価格)で、この分の負担が軽減されます。

厚生年金保険料は標準報酬額の9.15%です(事業主も9.15%負担します)。

報酬額が20万円の場合の厚生年金保険料は18,300円、15万円なら13,725円、10万円(標準報酬額98,000円)なら8,967円です。

仮に、15万円としますと、これまで支払ってきた国民保険料16,540円より2,815円負担が軽くなり、受けることのできる年金給付は、国民年金(老齢基礎年金)に老齢厚生年金が追加されます。

つまり、この場合、保険料負担は減って、年金給付は増えることになるわけです。

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◆どれくらい増えるか?

この条件で10年働くとして、老齢厚生年金の額は、平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数ですから、150,000円×5.481/1000×120月=98,658円

年金額に影響する賃金、物価、年金加入者数等を考慮しない(将来の数字なので考慮できない)場合の単純比較で、年額98,658円(月額8,221円)多く年金をもらえることになります。

これを国民年金(老齢基礎年金、満額で月額約65,000円)の上乗せ部分として終身もらえます。

負担は軽くなってもらえる年金額は増える、いいことです!

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◆健康保険について

健康保険については、それまでの国民健康保険から協会けんぽの健康保険に移る場合が多いと思います。

国民健康保険も健康保険も給付面ではほとんど同じです。

保険料負担については、国民健康保険料は住んでいる場所や世帯員数によって変わります。

協会けんぽの保険料も、都道府県によって多少は違いますが、おおむね標準報酬額の5%(同じ額を事業主も負担します)として、月額報酬15万円なら保険料は7,500円です。

他の世帯員の被扶養者になっているなら別ですが、自分で国民健康保険料を払っているなら、国保より安くなる場合もあると思います。

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4.さいごに

しかし、このコロナ禍です。

非正規の短時間労働からも排除されて、生活苦に陥る人たちが増えています。

また、非正規のままで「社会保険に入れてやるよ」と言われても素直に「ありがとう」とは言えない状況もあると思います。

 そもそも人間を正規だの、非正規だのに区分して、おまけに社会保障にも差をつけているというのは一体どういうことだよ! と言いたくなることもあると思います。

 

ただ、現状において利用できる制度は利用し、したたかに生き延びるためには制度内容を知る必要があります。

今回は、負担は減って給付は増える場合が多いので、厚生年金の適用拡大は、「とりあえずは」「単純に言えば」短時間労働者にとっても歓迎すべきことだということをお伝えしました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

(2020.12.26)

*1:所定労働時間、所定労働日数の「所定」とは、会社等の就業規則などで定められているところの時間、日数です。