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【年金制度改革:厚生年金の適用拡大】④高齢者にとっての影響は? 年金より健康保険?

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こんにちは。

厚生年金の適用拡大によって、その対象者にどのような影響があるのかについて、考えてきましたが、今回は最終回で、定年退職後に仕事をしている高齢者の場合について考えてみたいと思います。

 厚労省資料(「社会保障審議会年金部会における議論の整理」令和元年12月27日 P.8)によりますと、今回の適用拡大の対象の「半数近く」国民年金第1号被保険者、「4分の1程度」第3号被保険者ということです。

それでは残りの4分の1程度はどういう人たちか? 

上記の資料には記載がありませんので正確にはわかりませんが、1号でも3号でもない、厚生年金が適用されていないので2号でもない。さて?

答えは、定年退職等によってフルタイムの仕事から離れて、週20時間~30時間の短時間労働者として働いている60歳以上の高齢者になると思います。(若い人でも、国民年金の手続きをせず未加入になっている人も該当するかもしれません。)

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65歳以上の高齢労働者の場合

第1号被保険者の場合と同様に、シミュレーションしてみたいと思います。

現在65歳の人が70歳まで5年間、

[ケースA]時給1,200円で週20時間働く場合と、

[ケースB]時給1,500円で週28時間働く場合について、

厚生年金保険料と70歳になって受け取る年金の増額分について試算してみます。(以下、いずれも単身世帯としての計算)

ケースA:時給1,200円×20時間×4週=月収96,000円→標準報酬98,000円

ケースB:時給1,500円×28時間×4週=月収168,000円→標準報酬170,000円

<厚生年金保険料>

ケースA:98,000円×保険料率18.3%×1/2(労使折半)=8,967円

     8,967円×12月×5年=538,020円

ケースB:170,000円×保険料率18.3%×1/2(労使折半)=15,555円

     15,555円×12月×5年=933,300円

<年金額(増額分)>

ケースA:98,000円×乗率5.481/1000×12月×5年=32,228円

ケースB:170,000円×乗率5.481/1000×12月×5年=55,906円

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ケースAでは、月収9万6千円で保険料が月9千円、年金が年3万2千円(月2,685円)増え、ケースBでは、月収16万8千円で保険料が月1万5千円、年金が年5万6千円(月4,659円)増えることになります(加給年金額、経過的加算への影響がないものとして試算)

5年間に支払った厚生年金保険料と同じ額を、年金として受け取るためには、いずれも16.7年(※)かかります。
※保険料率と年金の乗率との関係で計算上、常に16.7年になります。

 

保険料負担は重く、年金は思ったほどには増えませんね。

支払った保険料を取り戻すためには17年間(87歳まで!)年金を受け取る(生きる!)必要があります。 

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もう一つの年金制度改正! その効果は?

上記の年金の増額は「退職時改定」による試算ですが、今回、実は「在職定時改定」というもうひとつの制度改正が予定されています。

老齢厚生年金を受給しながら、会社等に勤務して仕事を続けているときは、退職したときにはじめて年金額が改定される「退職時改定」が原則ですが、65歳以上の場合には、その「経済基盤の充実を図る」(厚労省資料)ため、在職している間も1年ごとに年金額を改定する「在職定時改定」を行うという改正内容です。

そうしますと、上記のケースAの例で、66歳時には、98,000円×5.481/1000×12月=6,445円。同様に67歳時には12,891円、68歳時には19,336円、69歳時には25,782円、合計64,454円増額になります(いずれも年額。改定の具体的な時期などがわかりませんので金額はあくまでも参考まで)

この「在職時改定」の導入によって、支払った保険料を取り戻す期間は15年(85歳まで)に短縮になります。

「う~ん」という感じでしょうか。

 

私も実際に試算してみて、高齢者の厚生年金加入は、保険料負担と年金増額分の比較から、「経済基盤の充実を図る」ことになるのかどうかやや疑問に感じます。

厚生年金の適用拡大、「在職時改定」とも、制度の「改善」であることは間違いありませんが、その効果はそれほどでもないというのが正直な感想です。

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医療保険の保険料負担軽減の方が大きい?

厚生年金の適用関係は、健康保険とセットになります。

週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者社会保険(厚生年金、健康保険)の適用対象でない場合は、原則として(他の人の被扶養者でない限り)、国民健康保険国保)に加入しているはずです。

高齢者も74歳までは国保加入者として、国保保険料を支払わなければなりません。

この人が社会保険の適用対象となると、健康保険料が給料から天引きされますが、国保保険料を支払う必要がなくなります。両方の保険料を試算してみます。

<健康保険料(協会けんぽ)> ※東京都の保険料率9.9%(全国平均は10%)

ケースA:98,000円×保険料率9.9%×1/2(労使折半)=4,851円(年額58,212円)

ケースB:170,000円×保険料率9.9%×1/2(労使折半)=8,415円(年額100,980円)

国民健康保険料>東京都世田谷区の場合

ケースA:年額42,423円 ケースB:年額150,516円

※単身世帯としての計算。国保の保険料計算はたいへん複雑になっていて、この金額が正確かどうか自信はありません。あくまでも「この程度」という参考にしてください。ケースAは、法定5割軽減該当とした金額。

国保の保険料は、住んでいる市区町村によって異なりますので、担当課の窓口できちんと計算してもらう必要がありますが、上記の計算からもわかりますように、保険料の軽減に該当する低収入の場合は、両者の保険料額にそんなに違いはありませんが、軽減に該当しない場合は健康保険料の方が安くなると思われます。

また、世帯員がいると国保保険料は高くなりますが、健康保険料は扶養家族がいても保険料は変わりませんので、一般的には、適用拡大によって、医療保険にかかる毎月の保険料負担は軽減されると考えてよいと思います(給付内容については、健康保険と国保でのほとんど違いはありませんが、健康保険の傷病手当金の対象となります)。

 

今回の厚生年金の適用拡大は、高齢者においては、厚生年金そのものより、健康保険保険料負担において効果が大きいと言ってよいように思います。

具体的には、前年所得額、世帯構成、住んでいる市区町村によって国保保険料の額は違ってきますが、かなりの負担減になる可能性があります。

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今回は、今年度予定されている厚生年金の適用拡大による高齢者への影響について考えてみました。

今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
 (2020.01.30)(一部修正 2020.06.19最終)

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