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【年金制度改革:厚生年金の適用拡大】③被扶養配偶者にとっての影響は?

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今回は、厚生年金の適用拡大が、被扶養配偶者にとってどういう影響があるのかについて、考えてみたいと思います。

 

厚労省資料(「社会保障審議会年金部会における議論の整理」令和元年12月27日 P.8)によりますと、今回の適用拡大の対象となる、週労働時間20時間以上30時間未満、かつ月額賃金8.8 万円以上で働く短時間労働者の「半数近く」が、前回お伝えしました国民年金第1号被保険者であり、「4分の1程度」被扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)ということです。

被扶養配偶者(第3号被保険者)とは?

被扶養配偶者国民年金第3号被保険者)とは、会社等に勤めて厚生年金と健康保険に加入している人(被保険者)に扶養されている配偶者のことになります。

「扶養されている」と認定されるための基準は、「年間収入130万円未満、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満(同一世帯の場合)」とされています。いわゆる「130万円の壁」というものです。
所得税配偶者控除を受けることができるのは、配偶者の給与収入が103万円以下の場合です(いわゆる「103万円の壁」。ただし、令和2年分以降は113万円。これを超えても一定額の収入であれば特別配偶者控除の対象となる場合があります。)

社会保険の被扶養配偶者に認定されると、年金は、国民年金第3号被保険者となって、年金保険料(掛金)納付する必要はなく、国民年金の額は保険料を納付したものとして計算されます。

医療は、健康保険の被扶養者となって、保険料負担はなく(被保険者の保険料が増額されることもなく)、医療機関での受診などの給付を受けることができます。

要するに、被扶養配偶者「負担なし、給付あり」です。

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社会保険が適用されると?

この被扶養配偶者が、前回の国民年金第1号被保険者のケースAと同じく、時給1200円、週20時間働いている40歳短時間労働者としますと、今回の改正で、厚生年金の被保険者となり(国民年金は第3号被保険者から第2号被保険者に変わり)、新たに厚生年金保険料として月約9千円が給料から天引きされます。

また、健康保険についても、被扶養者から被保険者(本人)に変わって、保険料約5.7千円天引きされます。

合わせて、月1万5千円ほど負担が生じ、その分手取り収入が少なりなります。

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負担に対応する給付はどうなるでしょうか。

年金は、65歳から、国民年金に加えて、老齢厚生年金年額16万円、月額1万3千円)を受給できるようになります。

また、厚生年金加入中に障がい者となったときは、要件に該当すれば障害厚生年金を受給できるようになります。

健康保険は、被保険者として、被扶養者に対する給付にはない傷病手当金出産手当金の給付対象となります。

医療機関での受診等に違いはありません。

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「106万円の壁」

この例(ケースA)ですと、厚生年金保険料として負担した額を、年金として取り戻すためには、16.7年かかります(年金保険料率と年金の乗率の関係で常にこの年数になります)

また、年金と健康保険と合わせて、月に1万5千円負担が増えて、65歳から受ける老齢厚生年金は月に1万3千円です。

ずっと先(この例では25年先)に1万3千円貰うより、今の1万5千円が惜しいと思う人も多いでしょう。

そういう人は、被扶養配偶者のままでいるために、月額賃金8万8千円、年収約106万円にならないように、仕事をする時間を調整(就業調整)するのではないかとの意見があります。

いわゆる「106万円の壁」です。

就業調整は、人手不足につながることになり、事業者団体の一部が厚生年金の適用拡大に反対する理由になっています。

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前回の適用拡大のときはどうであったか?

通常の労働者の労働時間の4分の3に満たない短時間労働者には、社会保険(厚生年金、健康保険)が適用されないのが原則(「4分の3基準」)ですが、平成28年10月に、従業員数500人超の事業所で働く、一定要件に該当する短時間労働者に対して、例外として適用されるようになりました。

このときに、初めて「106万円の壁」ができたのですが、上記の厚労省資料(P.6)には「前回の適用拡大が労働者の働き方に与えた影響を検証すると、適用拡大前の時点で第3号被保険者であった者についても、労働時間を延ばし、保険加入を選択した者のほうが、労働時間を短縮した者よりも多かった。」と記載されています。

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どう考えればよいか?

従業員数50人超(2024年10月から)の事業所で働く、収入が106万円から130万円の間にある人たちで、現在は、被扶養配偶者として、年金は国民年金第3号被保険者、健康保険は被扶養者となっている、「負担なし、給付あり」の人たちがどうすればよいのでしょうか。

上の例のシミュレーションを見ますと、被扶養配偶者(第3号被保険者)の場合、給付の増に比して、負担増の方が大きすぎるような気がします。

就業調整して「106万円の壁」を超えないようにする人もあると思います。あるいは、従業員数50人以下の事業所に変わるとか・・・。
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ただ、長い目で見れば、以下の点において、適用拡大の効果・意義があるのではないかと思います。

一つは、保険料負担と年金受給額との比較で見れば、65歳から17年経過しないと適用拡大の効果がありませんが、年金は終身ですので、「長生きリスク」に備えるという観点からは大いに意味があります。

二つには、被扶養配偶者というのは、あくまでもその人を扶養している人(被保険者)との関係ですから、被保険者が倒産、失業等によって被保険者資格を喪失したり、あるいは離婚した場合など、途端に被扶養配偶者ではなくなってしまうという不安定さを抱えています。

適用拡大によって、被保険者(本人)となることで、より安定した立場(資格)を得ることができます。

三つには、厚生年金も健康保険も「社会保険」制度であり、加入者が保険料を負担したものを集めておいて、保険事故(老齢、障害、死亡、疾病、負傷等)に遭った人のために給付するという社会連帯のしくみとして、国が行っているものです。

社会保険の被保険者になるということは、自分一人の損得云々ではなく、社会連帯(支え合い)のしくみに参加するという意義があります。

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結論

被扶養配偶者(第3号被保険者)は、世帯の生計中心者ではありませんので、「負担なし、給付あり」の優遇された立場を守って、就業調整する気持ちは十分理解できます。

また、目先の損得ばかりではなく、長い老後のことも考えるべきということもわかります。

結局のところ、各人がそれぞれの事情や考え方に応じて、それぞれで判断する、ということしかないと思います。

また、前回の第1号被保険者のところでもお伝えしましたが、これを契機に、短時間労働者という立場から脱却して、フルタイムでの就労によって、もっと積極的に社会的に活躍することについても検討してもよいのではないかと思います。

今回は、厚生年金の適用拡大に関して、被扶養配偶者の場合について考えました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
  (2020.01.28)(一部修正 2020.06.19最終)
 

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