定年退職の場合は、雇用保険の受給期間を延長できるしくみがあります!
こんにちは。
定年退職後、再雇用制度でそのまま仕事を続ける人の方が多いでしょうが、そうではなく、定年を機にいったん仕事するのを止めて、しばらくゆっくりしたい、仕事をするかどうかは、そのあとにあらためて考えればいいという人も、当然ながら、たくさんおられると思います。
そういう場合の雇用保険の手続きについて、お伝えしたいと思います。
基本手当の受給期間の延長
仕事を辞めて、求職活動している期間に受給できる雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)は、受給できる期間(受給期間)が、離職日(会社等を退職した日)の翌日から起算して1年間と定められています。
この期間を過ぎると、基本手当は受給できません。
ただし、何事にも例外というものがあり、この受給期間にも、原則の1年間を延長できる場合があります。
前回、お伝えしました病気での退職もそうですが、そのほか妊娠、出産、育児、負傷等で引き続き30日以上職業に就くことができない場合にも、その期間が、通算4年を限度に延長できます。
これとは別に、定年退職の場合にも、基本手当の受給期間が延長されるしくみがあります。
それは、定年退職して、しばらくゆっくりしたい、という期間を求職活動の猶予期間と考えて、原則1年間の受給期間に、最長1年間の猶予期間を加えて、最長2年間を受給期間にできるというものです。
例えば、定年退職して、1年間、ゆっくり心身を休めて、旅行でもしながら今後のことを考えるということもできます。
猶予期間は、1年以内なら、1か月でも何か月でもOKです。
離職後2か月以内の申請が必要
この定年退職の場合の受給期間の延長には、手続きが必要です。
離職の日の翌日から起算して2か月以内に、延長申請書を離職票といっしょに住所地のハローワークに提出しなければいけません。
受給期間の延長申請をして、それが認められた場合、その猶予期間内にハローワークに行って、求職の申し込みをしたら、そこで猶予期間は終了します。
例えば、1年間の猶予期間を申請していて、半年経った頃にそろそろ仕事を探そうかと、ハローワークに行ったとしたら、その時点で猶予期間は終了します。
ですから、当初は1年間の猶予期間を申請しておけばよいと思います。
そして、その後の事情に応じて、自分の都合の良い時期にハローワークに出向いて、基本手当をもらいながら求職活動を行うことにすればいいのではないかと思います。
なお、例えば3か月の猶予期間を申請して認められている場合に、もっと長く休みたいというときは、離職後2か月の申請期限内であれば「変更」の申請ができます。
定年退職による基本手当の受給期間の延長は、定年退職者にとって選択の幅を広げるという意義があり、自分の退職後の生き方を考えるうえで、1つの方法として検討してみる価値はあると思います。
何十年も働いてきたわけですから、1つの区切りとして、しばらく休んで、これからの人生についてあれこれ思いを巡らすということもあってよいと思います。
再雇用期間の満了時にも適用される、しかし?
この制度は、満60歳以上(船員を除く)の定年退職の特例ですが、定年後の再雇用期間が満了した場合にも適用されることになっています。
例えば、定年後、そのまま1年更新で5年間働くことができることになっている会社等の場合、その5年が経過したときにも延長ができるというわけです。
ただし、5年間勤務できるところを3年で辞めたような場合には適用されません。
しかしながら、この再雇用期間の満了時の受給期間の延長にどんな意味があるのか、私にはわかりません。
60歳定年の会社として、定年の時期が60歳の誕生日にしても、誕生月の末日にしても、60歳に達した最初の年度末にしても、5年経ったら当人は65歳になっています。
制度改正により、平成29年1月から、65歳以上も雇用保険の被保険者(高年齢被保険者)となりますが、64歳未満の一般被保険者とは別の取り扱いとなっていて、一般被保険者の基本手当に相当する高年齢求職者給付金は、一時金として支給されます。
一時金を貰うことのできる受給期限(受給期間ではありません)は離職後1年間ですが、この受給期限は延長できないこととされています。
一時金の受給を延長すること自体意味がありません。
高年齢者の雇用確保措置で、再雇用の満了期間は5年が通常ですので、満了したときは、すでに基本手当は受給できません。
その時点での基本手当の受給期間の延長とは、どういう意味なのかわかりません。
一般の会社での定年の場合は、この再雇用期間の満了時の受給期間の延長は意味がないと思います(何か私が勘違いしているのかもしれませんが)。
疾病等の延長と併用が可能
ちょっと複雑になりますが、この定年退職等による受給期間の延長と、妊娠、出産、育児、疾病、負傷等による延長とは併用できることになっています。
例えば、定年による6か月の猶予期間を申請して、受給期間が1年6か月になっている人が、その期間中に病気等で3ヶ月職業に就くことができない事情が生じたときは、その期間さらに延長できることとなり、通算1年9ヶ月の受給期間となります(原則、最長4年)。
最後に
定年退職して、仕事をせずゆっくり休養したいと思っている人は、すべて受給期間の延長を申請しなければいけないわけではありません。
すぐにハローワークに行って基本手当を貰う手続き(求職の申し込み、受給資格の認定、求職活動及び失業の認定)をすることもできます。
ただし、ハローワークで、「当分仕事はせずにゆっくり休みたい」と言うと、基本手当は支給されません。
基本手当の支給は、仕事をする能力と意思があることが大前提ですので、念のため。
今回は、定年退職時の雇用保険の基本手当の受給期間延長についてお伝えしました。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.02.15)