【全世代型社会保障検討会議・中間報告】労災適用拡大など、フリーランスの保護について
こんにちは。
以前、フリーランスの保護についてお伝えしました。☟
6月25日、全世代型社会保障検討会議の第9回会議が行われ、第2次中間報告☟が取りまとめられました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai9/siryou1.pdf
その中で、フリーランスの保護についての方向性が示されましたので、今回は、そのことについてお伝えしたいと思います。
1. ガイドラインの策定
① 契約書面の交付、発注事業者・仲介事業者による取引条件の一方的変更、支払遅延・減額について
契約の際に文書交付は当たり前でしょ!
一方的な条件変更、支払いの遅延・減額はダメ!
法制度を改正するものではありませんが、今後、ガイドラインを策定して、これらの行為が、現行の独占禁止法上の優越的地位の濫用や、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)上の禁止行為にあたって不適切であることを明確にするとされました。
② 現行法上「雇用」に該当する場合
「名ばかりフリーランス」を排除!
契約の形式上、フリーランスとして業務を行っていても、①発注事業者の指揮監督、②報酬の労務対償性、③機械、器具の負担関係や報酬の額、④専属性などの観点から、総合的にみて、実質的な「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されることについても、ガイドラインによって明確にするとされました。
実質的な雇用関係を、業務委託契約等に偽装して、都合よく、安く労働者を働かせようとする事業者は許せません。
2. 立法的対応の検討
労働者の保護において、事業所規模の大小は関係ない!
上記のブログでも、指摘しましたが、下請法は取引条件を明記した書面の交付を義務付けていますが、資本金1000万円以下の企業はその義務がありません。
そこで、今後、下請法の改正を含め立法的対応の検討を行うこととされました。
当然のことであり、1000万円以下の事業者からの仕事をしている割合も多いことから、事業所規模の撤廃が必要と考えます。
3. 執行の強化
中小企業庁の取引調査員(下請Gメン)や公正取引委員会の職員の増員の検討を行うこととされました。
制度があっても、それが適正に実施できていなければ何にもなりません。
4. 労働者災害補償保険等の更なる活用
労災適用の対象、拡大!
これにつきましては、「ギグワーカー労災対象に」(6月26日日経新聞)、「フリーの労災加入、対象拡大へ」(6月24日共同通信)などと報道されました。
今回の第2次中間報告書には、次のように記載されています。
フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険の更なる活用を図るための特別加入制度の対象拡大等について検討する。また、フリーランスとして働く人も加入できる共済制度(小規模企業共済等)の更なる活用促進を図る。あわせて、フリーランスとして働く人のリモートワーク環境の整備を支援する。
ここに、労災の特別加入制度と小規模企業共済という、具体的な制度が示されています。
それぞれどういう制度なのか、次に、その概要を確認しておきたいと思います。
5. 労災の特別加入制度
フリーランスでも加入できる!
自営業等は、雇用関係にありませんので、労働者性がなく、他の労働法規とともに、労災の適用対象ではありません。
しかし、これらの人の中には、雇用労働者と同じように仕事・業務に従事している人も多く、業務に伴う危険性は変わりありませんので、一定の要件のもとに、労災の適用対象とする特別加入制度が設けられています。
◆特別加入は3種類
- 第1種:中小事業主等・・・商店主など、雇用する労働者と同じように業務に従事する場合があります。
- 第2種:一人親方等・・・大工、個人タクシー、宅配業者など。
- 第3種:海外派遣者
現行では、特別加入できる要件に該当しないフリーランスについて、第2種の一人親方等に準じた特別加入者とする方向のようです。
労災は、強制加入で、保険料は事業主のみが負担しますが、特別加入の場合は、任意加入で保険料も自己負担になります。
保険料の額は、民間の生命保険と同じように、補償額(給付基礎日額:3,500円~25,000円)に応じた保険料の中から選択します。
現行の第2種特別加入者は、個人加入はできず、団体を通じた加入になっています。
そのため、インターネットで、例えば「建設業(個人タクシー、etc) 労災特別加入」などと検索しますと、多くの特別加入サイトがヒットします。
◆労災特別加入の効果
二次健康診断給付は受けられませんが、休業(補償)給付、療養(補償)給付、傷病(補償)年金、障害(補償)給付、介護(補償)給付、遺族(補償)給付、葬祭料の給付対象となります。
ただし、第2種特別加入の場合、業務内容によっては通勤災害が適用されないことがあります(個人タクシー、個人貨物運送業者など、「通勤」の概念になじまない業種)。
6. 小規模企業共済
フリーランスでも利用できる退職金制度
これは、制度改正ではなく、現行でも加入できるもので、もっと活用促進を図るということです。
(以下、中小機構のホームページから)
国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
【中小機構の動画で紹介されている例】
① 掛金 月3万円 10年間 → 共済金387万円
② 掛金 月3万円 15年間 → 共済金603万円
私が年間36万円として計算しましたところ、年利約1.5%の複利運用に相当します。
日銀のインフレ目標2%には届きませんが、ゼロ金利の時代には割の良い制度かもしれません。それも約束された金利ですから。
◆3つのポイント
① 掛金は加入後も増減可能、全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
月々の掛金1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定可能
② 共済金は、退職・廃業時に受け取り可能。
満期、満額はなし。共済金の受け取りは「一括」「分割」「一括と分割の併用」から選択
「一括」の場合は「退職所得」扱い、「分割」の場合は「公的年金等の雑所得」扱い
③ 低金利の貸付制度の利用が可能
7. まとめ
下請法の企業規模の見直しと労災適用の対象拡大
以上、全世代型社会保障検討会の第2次中間報告に盛られましたフリーランスの保護に関する内容を概観しました。
現行の法制度の明確化、執行の強化、活用促進に加えて、下請法が適用される企業規模の見直しと労災適用の対象拡大が、法制度の改正の検討項目ということです。
フリーランスとしての働き方は、今後、増加していくことは間違いないものと思います。
雇用労働者ではないとしても、働く者には変わりありませんので、それらの人たちを保護する現行制度の見直し・改正や新しい制度の導入など、多様な働き方に対応するような制度整備が必要だと考えます。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.07.11)