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【老齢厚生年金】②「再評価率」を決める5つの要素について

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こんにちは。

前回は、受給開始後の老齢厚生年金の額の増減を決めている「再評価率」と、その毎年度の改定に関係する5つの要素について、お伝えしました。

今回は、その5つの要素のそれぞれについて見ていきたいと思います。

 

1.5つの要素

①物価変動率 

②実質賃金変動率 

可処分所得割合変化率

公的年金被保険者数変動率 

⑤定数の0.997

 

① 物価変動率

これは、前年の物価指数を前々年の物価指数で除して得られた率です。

要するに、前年の物価指数上昇率です。

ここで言う物価指数とは、総務省が公表する年平均の全国消費者物価指数を指します厚生年金保険法(以下「法」と言います。)第43条の2第1項第1号)

 

物価の上昇、下降が、年金額の増減に反映することになります。

直近10年間物価上昇率の単純平均は年+0.48%、直近5年間の平均は+0.54%です。

日銀が目標とする年+2%にはなかなかなりません。

今後のことを見通すことは困難ですが、少なくとも今年は、昨年10月の消費税増税以降の消費の冷え込みに加えて、新型コロナウィルスによる経済活動の自粛の影響が大いに懸念されます。

② 実質賃金変動率

これは、標準報酬平均額の変動率(前々年度対5年度前)を物価変動率(前々年対5年前)で除した率の3乗根とされています(法同条同項第2号)

これも物価と同じく、実質賃金の上昇、下降が、年金額の増減に反映するしくみです。

 

直近10年間の実質賃金上昇率の単純平均は年-0.26%、直近5年間の平均は-0.16%です。

平均値はマイナスですが、直近2年間はプラスに転じています。

ただ、今後の賃金に対する新型コロナウィルス等の影響の大きさを、いま現在において推し量ることは困難ですが、なかなか厳しい状況ではないかと思います。

また、高年齢者や女性などを中心とする短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大によって、相対的に低報酬の労働者が増えることで、標準報酬平均額はマイナス方向にぶれることとなって、再評価率、ひいては年金額の増減にも影響するかもしれません。

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可処分所得割合変化率

これは、次のイをロで除した率となります(法同条同項第3号)。  

イ:0.910-3年前の9月1日の厚生年金保険料率の2分の1

ロ:0.910-4年前の9月1日の厚生年金保険料率の2分の1

 

厚生年金保険料率は、平成29年度に1000分の183となるまで、順次引き上げられてきて、以後は1000分の183で固定されました。

令和2年度の可処分所得割合変化率は、-0.1%ですが、保険料率の固定によって、令和3年度以降は±0%となりますので、再評価率の改定率の変動要因としては考慮しなくてよいことになります。

公的年金被保険者数の変動率

これは、5年度前の公的年金の被保険者数に対する前々年度の公的年金被保険者数の比率の3乗根となる率とされています(法第43条の4第1項第1号)

当初、マクロ経済スライドが導入された平成16年の年金法改正の時点においては、公的年金被保険者の「減少率」と考えられていて、その率は-0.6%程度と想定されていました。 

次の⑤の平均余命は伸びて、年金受給者数は増えていくのに、一方、年金の支え手である現役の被保険者数が減少していくことを想定して、年金財政の均衡のために、マクロ経済スライドが導入されたわけです。

 

ところが、公的年金被保険者変動率の実績値を見ますと、平成26年-0.7%平成27年-0.6%平成28年-0.4%、平成29年度-0.2%、平成30年度±0%平成31年+0.1%、令和2年度+0.2%と、被保険者数の増加に伴って上昇し、直近ではプラスに転じています。

 

これは、最近の高年齢者及び女性の就労者の増加を反映したものです。

高齢者は、定年退職後も働き続けることで、自らの所得を確保するとともに、年金全体の増額にも貢献することができますが、上記②のように反対の効果もあります。

また、法には、公的年金被保険者数の変動率に次の⑤の定数0.997を乗じた率が、1より大きくならないことの規定がありますので、プラス効果は限定的です。

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⑤ 定数の0.997

この「0.997」については、法(第43条の4第1項第2号)には数字があるだけで、何の説明も規定もありませんが、厚労省の年金額の改定に関するプレスリリースには「平均余命の伸び率」と記載されています。(なお、正しくは、「平均余命の伸び率の逆数」になると思います。平均余命の伸び(プラス)を「マイナス」として計算するのですから。)

 

マクロ経済スライドが導入されました平成16年年金改正法に関する厚労省の資料を見ますと、「0.997」は、将来推計人口による2000年から2025年の65歳平均余命の伸び率の平均値0.36%を根拠として設定されているようです(平成15年9月12日 厚労省社会保障審議会年金部会「年金制度改正に関する意見」P.14)

 

厚労省が、毎年公表している簡易生命表で、65歳の平均余命の最近5年間のデータを見ますと、男性は年平均0.64%女性は年平均0.44%伸びていますので、制度導入時の想定を超えて、高齢者の平均余命は伸長していることになります。

2.年金額の増減シミュレーションの例

以上、ひとりの人が年金の受給を開始した後の年金額の増減及びその程度は、再評価率の改定及びその程度によって決定すること、そして、その再評価率の改定の程度は5つの要素によって決定することをお伝えしました。

 

その5つの要素を次のように改定して、受給してから10年後の年金額がどうなるか、シミュレーションをしてみたいと思います。

物価変動率:直近5年間の平均値+0.5%(1.005)

実質賃金変動率:直近5年間の平均値は-0.52%ですが、新型コロナウィルスの影響を考慮して-0.6%(0.994)

可処分所得割合変化率±0%(1)

公的年金被保険者数の変動率:直近の+0.2%(1.002)

定数の0.997

※ただし、前年度の特別調整率マクロ経済スライドの未実施分)はないものとします。

 

名目手取り賃金変動率=①×②×③=0.999

平成28年の年金法改正により、新規裁定者、既裁定者とも、
再調整率=0.999×④×⑤=0.998になります。

受給開始時の年金の額を100とすると、2年目の年金額=100×0.998=99.8

 

以下、同様に計算していきますと、10年目の年金額=98.21となり、約1.8%減額という結果です。

以前、お伝えしました「平均年金月額」のように、「10年間で10%以上の減額」はならず、当事者としては安堵するところですが、今後、新型コロナウィルスによる影響など、経済情勢による物価変動率、実質賃金変動率の動きによっては、もっと大きな増減の可能性が十分にあります。

 

今回は、2回にわたって、ひとりの人が65歳で受給し始めた老齢厚生年金の額の増減を決めている「再評価率」と、それを構成する5つの要素について考えてみました。

 

なお、国民年金の場合は、「改定率」と呼びますが、その改定についても、「再評価率」の改定と同じルールが適用されています。
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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

 (2020.04.03)(一部修正 2020.06.20最終)

 

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