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【老齢厚生年金】①「特定の個人」の年金額を決める「再評価率」って、何?

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こんにちは。

以前、このブログで4回にわたって、「老齢厚生年金の額が10年間で10%以上減っている」ことについて、お伝えしました。

 

その中で、年金額が減少する要因として、以下の項目を挙げていました。

①給料収入(平均標準報酬(月)額)の減少

②物価や賃金の変動率による調整(再評価率)

マクロ経済スライドの導入

④5%適正化と経過措置としての従前額保障 

⑤総報酬額制の導入

⑥生年月日による乗率の違い

⑦特例水準の解消

⑧厚生年金の適用拡大

 

このときは、厚労省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」で公表されているデータに基づいて考えたわけですが、上記の項目は、「平均年金月額」の減少の要因としては妥当だと思いますが、「特定の個人(例えば、この私)が、年金を受給開始した後に、その額がどう増減していくのか」という疑問に答えるものでは必ずしもありませんでした。

 

今回は、あらためて、その疑問について考えてみたいと思います。

老齢厚生年金の額の計算式を、再度、確認しておきます。

年金額の計算式は、次の(a)と(b)の合計額になります。

(a)平成14年度までの被保険者期間分

 平均標準報酬月額×乗率(7.125/1000)×被保険者期間の月数

(b)平成15年度以降の被保険者期間分

 平均標準報酬額×乗率(5.481/1000)×被保険者期間の月数

ただし、過去の標準報酬月額と標準賞与額には、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じます。厚生年金保険法第43条第1項)

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1.再評価率について

このうち、標準報酬月額、標準報酬額、及び被保険者期間の月数は、年金受給開始時点で決まってしまいますので、将来にわたって変更がありません。

乗率については、法定事項ですから、法律改正がない限り、変更がありません。

したがって、年金額を増減させる変数は「再評価率」のみになります。

 

この再評価率とは、何十年間にもわたる被保険者期間の標準報酬月額や賞与額を、そのときの額面で計算するのではなく、それを「現在価値」に置き換えて計算するというものです。

給料の額も少なく、物価も安かったときの給料(標準報酬月額)の額面で年金額を計算すると、年金額が非常に少なくなって、いまの生活費には全く足りなくなってしまうので、最近の賃金水準や物価水準で再評価する必要があります。

 

それぞれの被保険者期間の標準報酬(月)額に、それぞれの再評価率を乗じたものを合計して、それを被保険者期間の総月数で除したものが、年金額の計算式の「平均標準報酬(月)額」になります。

 

再評価率は、厚生年金保険法(以下「法」と言います。)別表で、生年月日区分に応じて、被保険者であった期間ごとに定められていて、また、毎年度改定されることになっています。(再評価率の具体的な数値は、日本年金機構HPで確認できます。)


<例:平成31年度 再評価率表>

例:昭和13年度から26年度に生まれた者

被保険者期間:平成3年4月~平成4年3月 → 再評価率 1.100

〃    平成20年4月~平成21年3月 → 再評価率 0.960 など

 

平成3年度の給料(標準報酬)は1.1倍、平成20年度の給料は0.96倍しないと、平成31年度の「価値」にならないということです。

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2.再評価率の改定について

年金の額は、毎年改定される再評価率の数値によって、増減することになります。

例えば、再評価率が+1%(改定率1.001)になれば、年金の額も1%増額になります。

再評価率の改定の内容を見ていきます。

 

平成17年度以降の「調整期間(※)」中である現在の再評価率の改定は、次のように定められています(法第43条の4第1項)。  

 ※調整期間:保険料の負担が可能な範囲で、年金給付額を調整する必要がある期間

再評価率の改定率=名目手取り賃金変動率×調整率×前年度の特別調整率

ただし、これが1を下回るときは、1

 

これが、原則の計算式です。

しかし、たいへん面倒臭いのですが、以下のような規定もあります。

◇(賃金や物価のデータが揃わない)当該年度から3年度前までの再評価率については、別の定めがあります(同条第2項、第3項)。ただし、今回の考察においては影響ありません。

名目手取り賃金変動率1を下回る(マイナスになる)場合、名目手取り賃金変動率は次のようになります(同条第4項)

  物価変動率>名目手取り賃金変動率 → 物価変動率

  ただし、物価変動率>1 → 1

◇以上は、65歳に到達したとき(新規裁定者)の年金額の計算における標準報酬(月)額の再評価率の改定に関する規定ですが、68歳になる年度以後(基準年度以後:既裁定者)の再評価率の改定は、名目手取り賃金変動率ではなく、物価変動率を基準とすることになっています(法第43条の5)

平成28年年金法改正によって、令和3年度から以下のように変更されることになっています。

 名目手取り賃金変動率<1、かつ 物価変動率>1の場合、

 → 新規裁定者、既裁定者とも、名目手取り賃金変動率を基準

 名目手取り賃金変動率<1、かつ 物価変動率<1、かつ 物価変動率>名目手取り賃金変動率の場合 → 新規裁定者、既裁定者とも、名目手取り賃金変動率を基準

 

この改正は、要するに、物価と賃金の「低い方の率に合わせる」という年金額の抑制策であり、国会での改正論議の際には、政府は、野党から「年金カット法案」との批判を受けました。

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名目手取り賃金変動率

名目手取り賃金変動率は、次のように定められています(法43条の2第1項)。

名目手取り賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率

調整率

調整率(いわゆるマクロ経済スライドによるスライド調整率)は、公的年金被保険者数の変動率定数の0.997を乗じて得られる率であり、前年度の特別調整率は、当該年度の調整率の未実施分(いわゆるキャリーオーバー)ですので、別の要素は関係しません。

 

したがって、再評価率の改定率は、次の5つの要素から成り立っていることになります。

物価変動率

実質賃金変動率

可処分所得割合変化率

公的年金被保険者数の変動率

定数の0.997

 
今回は、受給開始後の老齢厚生年金の額の増減を決めている「再評価率」について、お伝えしました。

 

次回は、「再評価率」の5つの要素の内容について確認したいと思います。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

 (2020.04.01)(一部修正 2020.06.20最終)

 

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