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過労死86人、過労自殺88人。厚労省「過労死等の労災補償状況」

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こんにちは。

今回は、厚労省が、6月26日に公表しました、令和元年度「過労死等の労災補償状況」についてお伝えし、現在のわが国の「過労死等」の状況を確認したいと思います。

 1. 過労死等とは?

「過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条において、

業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。

と定義されています。

 

要するに、次の2つの疾患を原因とする死亡とこれらの疾患です。

 

一般に、労災(業務災害)の認定においては、[a]業務遂行性と、[b]業務起因性の2つの要件を備えていることが必要です。

 [a]業務遂行性…労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態

 [b]業務起因性…業務と傷病との間の因果関係

 

特に、業務起因性の判断が困難な場合がありますが、厚生労働省令(労働基準法施行規則別表第1の2)に列挙されている疾病等が発症した場合には、因果関係が立証されなくても、原則として業務起因性を推定することになっています。

 

しかし、過労死等に係る上記2つの疾患については、業務と疾病との相当因果関係の判断がさらに難しい場合があるため、それぞれ、別に認定基準(通達)が定められています。

  • 脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準
  • 心理的負荷による精神障害の認定基準

Youtuber, コンピューター, 映画制作者, 映画プロデューサー, 上から, 短編映画 

2.脳・心臓疾患の労災補償状況

 (1) 令和元年度の状況

 請求件数 936件  [うち死亡事案  253件]、決定件数*1 684件 [同 238件]支給決定件数*2 216件 [同 86件]、認定率*3 31.6% [同 36.1%]

 

請求件数の27%、支給決定件数のおよそ4割が死亡事案であり、後者はまさしく「過労死」になります。

過労死するまで仕事をしてはいけません。

過労死するまで仕事をさせてはいけません。

 

(2) 最近10年間の推移
ア.脳・心臓疾患による労災補償
脳・心臓疾患 請求件数 決定件数 支給決定
件数
認定率
2010 平成22 802 696 285 40.9%
2011 平成23 898 718 310 43.2%
2012 平成24 842 741 338 45.6%
2013 平成25 784 683 306 44.8%
2014 平成26 763 637 277 43.5%
2015 平成27 795 671 251 37.4%
2016 平成28 825 680 260 38.2%
2017 平成29 840 664 253 38.1%
2018 平成30 877 689 238 34.5%

請求件数は、2014年度を底に、最近は増加傾向にあり、2010年に比べて134件、率にして17%も増えています。

一方、支給決定件数は、2012年度を最高として、最近は減少傾向にあり、2010年に比べて69件、24%も減っています。

その結果、2019年度の認定率は、高い時に比べると10ポイント以上低くなっています。

イ.うち死亡事案の推移
脳・心臓疾患
(うち死亡)
請求件数 決定件数 支給決定
件数
認定率
2010 平成22 270 272 113 41.5%
2011 平成23 302 248 121 48.8%
2012 平成24 285 272 123 45.2%
2013 平成25 283 290 133 45.9%
2014 平成26 242 245 121 49.4%
2015 平成27 283 246 96 39.0%
2016 平成28 261 253 107 42.3%
2017 平成29 241 236 92 39.0%
2018 平成30 254 217 82 37.8%
2019 令和元 253 238 86 36.1%

請求件数横ばい傾向、支給決定件数認定率減少傾向にあります。

脳・心臓疾患による労災に占める死亡事案の割合は、請求件数ではおよそ3割前後で推移していて、最近数年間は減少傾向にあり、支給決定件数においては、およそ4割前後を占めています。

業界, 工芸品, 労働者, ガラス職人, ガラス吹き製法, 仕事 

 

3.精神障害による労災補償状況

 (1) 令和元年度の状況

請求件数 2,060件  [うち自殺(自殺未遂を含む。) 202件]、決定件数*4

1,586件  [同 185件]、支給決定件数*5 509件  [ 同 88件]、認定率*6  32.1%  [ 同 47.6%]

 

請求件数のおよそ1割支給決定件数の約17%が、未遂を含む自殺事案になります。

 

長時間労働パワハラ、セクハラも重なって、うつ状態となり自殺してしまった、電通高橋まつりさんの事件が思い起こされます。

同じような事案が毎年100件近く発生しています。

会社は、労働者を自殺に至るまで追い詰めないでください!

 (2) 最近10年間の推移
ア.精神障害による労災補償
精神障害 請求件数 決定件数 支給決定
件数
認定率
2010 平成22 1181 1061 308 29.0%
2011 平成23 1272 1074 325 30.3%
2012 平成24 1257 1217 475 39.0%
2013 平成25 1409 1193 436 36.5%
2014 平成26 1456 1307 497 38.0%
2015 平成27 1515 1306 472 36.1%
2016 平成28 1586 1355 498 36.8%
2017 平成29 1732 1545 506 32.8%
2018 平成30 1820 1461 465 31.8%
2019 令和元 2060 1586 509 32.1%

 請求件数は、右肩上がりの増加傾向にあり、2019年度は、2010年度に比べて879件、率にして74%も増えています。

支給決定件数も同様であり、2019年度は、2010年度に比べて201件、65%も増えています。

認定率は、年度によって違いますが、おおむね30%台で推移しています。

 

イ.うち自殺事案の推移
精神障害
(うち自殺)
請求件数 決定件数 支給決定
件数
認定率
2010 平成22 171 170 65 38.2%
2011 平成23 202 176 66 37.5%
2012 平成24 169 203 93 45.8%
2013 平成25 177 157 63 40.1%
2014 平成26 213 210 99 47.1%
2015 平成27 199 205 93 45.4%
2016 平成28 198 176 84 47.7%
2017 平成29 221 208 98 47.1%
2018 平成30 200 199 76 38.2%
2019 令和元 202 185 88 47.6%

こちらは、請求件数、支給決定件数、認定率ともに、年度によってバラツキがみられます。

請求件数は、200件前後、支給決定件数は100件に満たない程度というところになっています。

精神障害による労災に占める自殺事案の割合は、請求件数では低下傾向にあります。

 

 ダンプ トラック, マシン, 重い, 車両, 建設, 機器, 掘削機, 産業

 

4. まとめ

以上、脳・心臓疾患による労災認定(支給決定)は、減少傾向にあり、精神障害による労災認定増加傾向にあることが確認できました。

また、脳・心臓疾患においては請求の3割弱、支給決定のおよそ4割が死亡事案であり、精神障害による労災においては請求のおよそ1割、支給決定の2割弱が自殺(未遂を含む)事案でした。

2019年度の「過労死等」の死亡者、自殺者(未遂を含む)はあわせて174人です。

 

この脳・心臓疾患と精神障害を原因とする「過労死等」は、本来「ゼロ」であるべきもの、そして「ゼロ」にできるはずのものです。

事業者には、労働者の健康管理義務があります。

労働者の健康、命を犠牲にして、企業利益を追求するなど許されるものではありません。

 

政府も、過労死等防止対策推進法を制定、施行し、当該法律に基づき「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を定め、厚労大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置し、「過労死等ゼロ」緊急対策*7として具体的な取り組みを行っています。

 

これらの対策は、掛け声だけではなく、現場において、厳格かつ的確に実施されることが必要です。

そして、過労死等の件数が着実に減少していくことがなにより重要です。

 

今回は、わが国の「過労死等」の状況について確認しました。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

(2020.08.07)

 

*1:決定件数は、当該年度内に業務上又は業務外の決定を行った件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。

*2:支給決定件数は、決定件数のうち「業務上」と認定した件数である。

*3:認定率は、支給決定件数を決定件数で除した数である。

*4:上記1.に同じ。

*5:上記2.に同じ。

*6:上記3.に同じ。

*7:https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/151106-03.pdf