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【年金制度改革:厚生年金の適用拡大】①「適用」と改正概要について

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2020年度の年金制度改革の一番の柱は、厚生年金の適用拡大だとされています。

4回にわたって、この内容について考えていきたいと思います。

初回は、制度改正の概要についてお伝えしたいと思います。

次回からは、厚生年金の適用拡大によって、新しく厚生年金の加入者になる人たちへの影響について、第2回は若い世代で適用前は国民年金加入者(第1号被保険者)であった人、第3回は就業調整をしやすいと指摘される被扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)、第4回は定年後に就労している高齢者、それぞれの場合について考えていきます。

 

1 厚生年金が「適用」されるとはどういうことか?

まず、厚生年金の「適用」制度について、改正部分に焦点を絞りながら、お伝えしたいと思います。

厚生年金は保険制度ですから、正しくは厚生年金保険と言い、加入者は「被保険者」と言います。

厚生年金が適用されるということは、加入(会社に採用された=被保険者となった)と同時に権利(年金の給付)義務(保険料の納付、給料からの天引き)が発生するということです。

年金と言えば、高齢になってからの老齢厚生年金のことがすぐ頭に浮かぶと思いますが、老齢年金ばかりではなく、障害厚生年金遺族厚生年金もあります(国民年金制度も同じ)。

老齢年金は、原則として、65歳になってはじめて年金が支給されるのに対して、障害厚生年金と遺族厚生年金は、加入と同時に年金給付の対象となります。

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2 どういう場合に厚生年金は「適用」されるのか?

厚生年金の「適用」については、どういうところで働いているか(適用事業所かどうか)、どういう働き方をしているか(適用除外に該当していないか)、という2つの要素が関係します。

(1)適用事業所とは?

会社等の法人は、従業員が何人であろうが、すべて強制的に適用事業所になります。

個人経営の場合は、「適用業種」と「適用業種以外」では扱いが異なります。

「適用業種」では従業員数5人以上強制適用5人未満任意適用、「適用業種以外」は従業員数にかかわらず任意適用となります。

この「適用業種」は法律で定められている16業種、「適用業種」ではない業種としては、農林水産業、飲食店、旅館、理容・美容業、クリーニング等のサービス業、法務サービス業(弁護士、税理士、社会保険労務士等)等があります。

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(2)適用除外とは何?

会社等の適用事業所で働いていても、厚生年金の適用対象とならない場合があり、これを「適用除外」と言います。

「適用除外」には、臨時的に使用される者とか、季節的業務に使用される者とか(それぞれ具体的な規定があります)いくつかの項目ありますが、そのなかに、いわゆる「4分の3基準」があります。

これは、通常の労働者の労働時間の4分の3に満たない短時間労働者は、適用除外として厚生年金の対象にしないという原則です。

※法定労働時間は週40時間ですから、その4分の3である週所定労働時間30時間未満の労働者が適用除外ということになります。

この「4分の3基準」については、平成28年10月に「被用者保険の適用拡大」として、基準該当者でも、従業員数500人超の適用事業所の労働者で、週所定労働時間20時間以上、月額賃金88,000円以上などの要件に該当する者については、例外的に厚生年金を適用するとする改正措置(短時間労働者への適用)が施行されていました。 

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3 今回の「適用拡大」の改正内容とは?

今回の改正点は、大きくは、短時間労働者への適用拡大と、「適用業種」の見直しの2つがあります。

(1)短時間労働者への適用拡大

今回の適用拡大の改正で最も大きいのは、この短時間労働者への適用拡大です。

「4分の3基準」該当者への厚生年金の例外的適用の要件である従業員数を、2022年10月に100人超へ、2024年10月に50人超に緩和するというものです。

これによって、従業員数50人超まで緩和された場合、新たに65万人が厚生年金に加入すると推計されています。厚労省年金局「第15回社会保障審議会年金部会 資料2」P.3)

また、勤務期間の要件についても、これまでは1年以上勤務見込みであることが必要だったのですが、それを2か月超に緩和することとされています。

(2)「適用業種」の見直し

現行では、「適用業種」となっていない個人経営の弁護士、税理士、社会保険労務士等のいわゆる「士業」を「適用業種」に追加するというものです。

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4 改正の経緯

厚労省は、「被用者である者には被用者保険を適用し、適用事業所に勤務する労働者はその事業所の規模を問わず被用者保険が適用されるべきである。こうした適用拡大は、将来の無年金・低年金が心配される単身世帯やいわゆる就職氷河期世代等で、現在、国民年金第1号被保険者である者にとって、将来の年金水準を充実させることにつながる。」(「社会保障審議会年金部会における議論の整理」令和元年 12 月 27 日 P.6)との趣旨から、事業所の規模要件については撤廃したい意向のようですが、「他方で、本部会では、被用者保険の適用拡大は、事業者側の社会保険料の負担を増加させるものであり、適用拡大に当たっては中小企業への負担に配慮した慎重な検討が必要であるという意見もあった。」(同上資料 P.7)として、今回改正のように規模要件の段階的な緩和に落ち着いたようです。

実際、事業主の保険料負担の増加になるとして、適用拡大=規模要件の緩和に反対を表明した事業者団体もあったようです。

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5 事業所規模の要件は早期に撤廃すべきだ!

事業所規模の要件については、今後も継続して検討されるようですが、私も速やかにこれを撤廃してほしいと思います。

厚労省の言うとおり、事業所の規模の大小で社会保険制度の対象になったりならなかったりというのは、「公平性」の観点からしておかしいと思います。

6 小規模事業所でも労使の合意で適用可能の場合もあり!

報道ではあまり触れられませんが、実は、平成28年年金改正法で、「500人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能とする。(国・地方公共団体は、規模にかかわらず適用とする。)」厚労省資料)という内容の改正がなされていて、平成29年4月から施行されています。

したがって、現在、あるいは今回の改正においても適用拡大の対象にならない規模の事業所でも、労使の合意があれば、(週所定労働時間20時間以上、月額賃金8万8千円以上等の要件に該当する)短時間労働者が厚生年金に加入することができます。

ここは労働組合に頑張ってもらって労働者の権利拡大に尽力してほしいと思います。

事業主も、厚生年金保険料の事業主負担は、給料と同じく当然の経費と考えて積極的に対応してほしいと思います。

その方が短時間労働者の就労意欲の向上、ひいては生産性の向上、企業利益の向上につながるものと考えます。

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今回は、今年度の年金制度改正の眼目である厚生年金の適用拡大の概要についてお伝えしました。

次回は、若い世代にとっての影響について、少し具体的に考えてみたいと思います。

今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
  (2020.01.24)(一部修正 2020.06.19最終)

 

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