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【老齢厚生年金の額が減少】④年金が10年間に10%以上減っている要因は?(その2)

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 前回に続き、年金額が、最近10年間に10%以上減っていることの要因と思われることについて考えてみたいと思います。

 

◆年金額の減少の要因と思われること

① 給料収入(平均標準報酬(月)額)の減少

② 物価や賃金の変動率による調整、改正(再評価率、H16、H28)

マクロ経済スライドの導入、改正(H16、H28)

 (今回は、ここから)

④ 5%適正化による経過措置としての従前額保障(H11) 

⑤ 総報酬額制の導入(H15年)

⑥ 生年月日による乗率の違い

⑦ 特例水準の解消(H25~27)

⑧ 厚生年金の適用拡大

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再度、年金の額の計算式を掲げておきます。

年金額の計算式は、次の(a)と(b)の合計額になります。

(a)平成14年度までの被保険者期間分

 平均標準報酬月額×乗率(7.125/1000)×被保険者期間の月数

(b)平成15年度以降の被保険者期間分

  平均標準報酬額×乗率(5.481/1000)×被保険者期間の月数

※過去の標準報酬月額と標準賞与額には、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じます。

※この原則の計算式とは別に「従前額保障」の計算式があります。

要因④ 5%適正化及びその経過措置としての従前額保障

5%適正化とは、平成11年に、乗率をそれまでの7.5/1000から7.125/10005%引き下げたことを言います。

そのときに、いきなり年金額が減額となることを避けるため、経過措置として、従前額保障の方式を導入しました。

それは、乗率を適正化前の7.5/1000とするものの、平均標準報酬額に乗ずる再評価率を平成6年再評価率で固定し、最後に算出された額に0.997~0.999の率を乗ずるものです。

この従前額保障による年金額と原則の計算式による年金額とのいずれか高い方の額が支給されます。

5%の削減はもちろんですが、従前額保障を受ける受給者が徐々に減っていきますので、これも年金額減少の要因となっています。

ここだけの話ですが、このブログを書くために自分の年金の明細書を見ましたところ、私も従前額保障になっていました! 自分のことながら、全く気が付いていませんでした!

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要因⑤ 総報酬額制の導入

平成15年度から、それまでは標準報酬月額に基づいて年金額を計算していたものを、賞与を含めて計算することとされました。

そのために、以後、年金額の計算は、平成14年までと平成15年度以降の2段構えでの計算となりました。

当時の被用者年金の全加入者の月収総額を1とすると、平均的な賞与総額の割合が0.3であったことから、平均報酬額に掛ける乗率を

7.125/1000÷(1+0.3)=5.481/1000としました。

 

しかし、厚労省年金局「厚生年金保険・国民年金事業の概況」で「平均標準月額」と「一人当たり標準報酬額(総報酬ベース・年額)」のデータから、私が計算してみましたところ、後者は前者(×12)の「0.3」にはなってはおらず、男女とも「0.2」前後です。

従って、乗率も、本当であれば、7.125÷1.2=5.938とすべきではなかったかと思いたくなります。

結果的には過度の切り下げになってしまったのではないでしょうか。

[5.938→5.481:7%の切り下げ

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被保険者期間のうちに占める平成15年度以降の期間が長くなるにしたがって、それ以前に比べて年金額の減少幅は大きくなると思われます。

「概況」には、比較できる「65歳以上」の平均年金月額のデータは平成14年度以降分しかなく、「65歳」のそれは平成17年度以降分しかありませんので、はっきり数字で示すことはできませんが、平成15年度の「65歳以上」年金額の前年度減少率が、他の年度に比べてやや高いことがそのことを示しているのかもしれません。

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要因⑥ 生年月日による乗率の違い

老齢厚生年金の額の計算式における乗率は、原則、平成14年度までの被保険者期間では7.125/1000であり、総報酬額制がとられた平成15年度以降の被保険者期間は5.481/1000です。

しかし、この原則の乗率が適用されるのは、昭和21年4月2日以後生まれた人の場合であり、その前の生年月日の人には原則ではない例外的な乗率が適用されることになっています。

[生年月日に応じた乗率] 

  生年月日            平成14年度まで  平成15年度以降

昭和2年4月1日まで          9.5/1000    7.308/1000

昭和2年4月2日~昭和3年4月1日    9.367/1000   7.205/1000

 (途中 略)

昭和10年4月2日~昭和11年4月1日   8.351/1000   6.424/1000

昭和11年4月2日~昭和12年4月1日   8.227/1000   6.328/1000

 (途中 略)

昭和19年4月2日~昭和20年4月1日   7.334/1000   5.642/1000

昭和20年4月2日~昭和21年4月1日   7.230/1000   5.562/1000

昭和21年4月2日以降         7.125/1000    5.481/1000

 

したがって、生年月日がより新しい受給者が増えていくにしたがって、全体の中の乗率の平均値は低くなっていきますので、年金額も減少していくことになります。

昭和21年度4月2日以降生まれの人が、65歳になるのは平成23年ですから、生年月日に応じた乗率を要因とする「65歳」時の平均年金月額の減少は、平成24年度以降は影響を受けません。

平成23年度における「65歳」時の平均年金月額の前年度減少率が、他の年度に比べて大きいことがこのことを示唆しているのではないかと思います。

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要因⑦ 特例水準の解消

年金額は、物価と賃金の変動率に応じて調整されることになっていますが、これらがマイナスのときは調整されない(再評価率を前年度のまま据え置き)ルールがあるため、物価と賃金の変動に対応した水準(本来の水準)よりも高くなることがあります。

これを特例水準と言い、平成24年度時点で、本来の水準との差が2.5%ありましたので、これについて、平成25年度1%26年度1%27年度0.5%と3か年度で解消されました。

平成25年度、26年度の「65歳以上」の平均年金月額の前年度減少率が相対的に大きくなっていることが、特例水準の解消が年金額減少の要因の一つであることを示唆しているのではないかと思います。

平成27年度については、物価、賃金が2%以上大きく上昇したため、初めてマクロ経済スライドが発動され、この特例水準の解消がされても再評価率はプラス0.9%の改定となり、年金額の前年度比でもプラスになっています。

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要因⑧ 厚生年金の適用拡大

短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大は、平成28年から実施されている事項で、これを要因とする年金額の減少は、今後のことになります。(内容については、「適用拡大」に関する私のブログをご参照ください。)

短時間労働者が対象ですから、賃金月額(標準報酬月額)も相対的に低額になります。これらの人たちが年金受給者となった場合は、全体的な平均年金月額は当然減少することになります。

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以上、2回にわたって、最近10年間で10%以上も減っている年金額について、減少要因についてお伝えしてきました。

本当でしたら、要因ごとにもっと分析すべきところですが、私に能力と時間的な余裕がないため、今はこの程度でご勘弁ください。

また、データとして使いました「概況」の老齢厚生年金には基礎年金が含まれています。

従って、本来は老齢基礎年金についても考察すべきところですが、今回はそこまで至っておりませんことをお断りいたします。

今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

  (2020.02.07)(一部修正 2020.06.20最終)

 

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